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Bluebird : Meets Fallen Angel 2

もう、三時間は経っただろうか。
心の痛みなど微塵も感じていないのに、生気を喪った目からは止め処なく涙が溢れる。
「てめぇみてぇな糞野郎が生きてっから、俺がこんなに苛々すんだろうが!」
喧嘩慣れしたマサルの渾身のドロップキックが、無防備に曝け出されたユタカの下腹部に、深く決まった。
「うぼぇっっ!!!」
息も絶え絶えのユタカは、堪らずに鮮血混じりの内容物を吐瀉するも、それが気管に入る事によって呼吸が益々苦しくなり、いよいよ意識が遠のく。
「おいマサル、そろそろヤバいぞ。」
「ちっ、仕方ねぇ……ずらかるか。」
正直、まだ痛め付け足りないと思っていた。
それだけにマサルは、後ろ髪を引かれる思いだったが、相棒のヒデユキの忠告に漸く我に帰ると、もう死にそうなユタカには目もくれずに、その場を走り去るのだった。

そこは、少子化の影響で廃校になった小学校の、体育倉庫。
何時の間にか意識を失っていたユタカは、全身の痛みによって目を覚ますと、引きちぎられた自らの衣服を這い蹲って手繰り寄せる。
「どうやって帰ろう……。もう、着れない……。」
下着すらも力任せに破られていて、原形を留めていなかった。
掌の中には、無残に変わり果てた洋服たちの成れの果て。
無数の痣と所々に点在する紅く開いた傷が生々しい素肌を余す所なく曝け出したまま、ユタカは途方に暮れていた。

その日の深夜……。
人目を避けるようにして寂れた細い道を選びながら、ユタカは鉛のように重たい足をどうにか引き摺っていた。
一糸纏わぬ姿の彼にはもう、局部を隠す余裕さえもない。
時々、鋭い激しい痛みが骨の奥まで響いて、立ち止まる彼の弱々しい呼吸を止めさせるからだ。
そうして徐々に意識が朦朧とする中で、惰性に基づく本能だけが、ユタカの足を自宅へと向かわせていた。
途中、大通りに差し掛かる。
自宅に戻るためには、どうしてもこの場所を通らなければならない。
交差点に着き、運送会社の長距離トラックが二台、立て続けに通り過ぎるのを虚ろな目でやり過ごしていると、コンビニの袋を提げた若い男と目が合った。
「う、あ、あ……。」
恥ずかしさから狼狽するユタカ。
その様子を見て、男は目を剥いて大声を上げる。
「君、それ、ど、どうしたんだ……!?大丈夫か?今、救急車呼ぶからな……!」
男の言葉で、張り詰めていた意識が遠のく。
その場に崩れるユタカ。
次第に霞み、滲んで溶けていく景色をぼんやりと眺めながら、ユタカは、遠くに聞こえる男の叫び声を、何故か心の何処かで愛おしく感じていた。
それが、ユタカとヤスキとの、運命の出逢いだった。

……目が覚めて気が付くとユタカは、床も壁も天井も真っ白でそれが何処か冷たい印象を見る者に与えるまだ真新しい病室の、その片隅にある小さなベッドで、点滴を受けながら横たわっていた。
人の気配がするので首をゆっくりと横に動かすと、あの時の男ヤスキが心配そうな表情でユタカの生気の無い顔をじっと見つめていた。
「やっと気が付いた……。良かった。俺、君があのまま死んじゃったらどうしようって、ずっとずっと心配で……。」
意識の無いユタカの隣でずっと不安な気持ちを持ち続けていたヤスキは、安堵から涙を零す。
「心配掛けちゃって、ごめんなさい。でも、ぼくなんか、居なくなっても誰も、困らないから……。」
男の優しさに戸惑いと罪悪感とを感じたユタカは、諦観を孕んだ力の無い言葉を、溜め息混じりに漏らすのだった。
それでも心の何処かで、いつか誰かが、こんな無力で惨めな自分を暗闇の底から引き上げてくれる事を、微かに願いながら……。

その頃、裏では今回の事件に関して警察が動いていた。
事件の共犯だったヒデユキは程なくして逮捕され、逃亡中だったマサルはいよいよ追い詰められる。
「畜生、畜生、ユタカなんかのせいでヒデユキが、ヒデユキが……。あいつ、絶対に殺してやる!今まであんなに気持ちよくしてやってたのに、あいつだって死ぬ程喜んでたのに……。目にもの見せてやる!畜生……。」
潜伏先の不良仲間の自宅でヒデユキ逮捕の一報を耳にしたマサルは、怒りのあまりに手にしていた携帯を二つにへし折ってしまう。
その時からマサルは、ユタカが退院するのを手ぐすねを引いて待っていた。そう、復讐の時の到来を心から待ち侘びていたのだ。
今度こそ確実に息の根を止めてやろうと、その内臓までをもこの手で引き摺り出してやろうと、腐乱し切った己の心に固く固く誓いながら。

そして、事件から一か月……。
ユタカはいよいよ退院の時を迎えていた。
ヤスキと二人、手を取り合って。
あれから、ヤスキはユタカの病室に毎日欠かさずに顔を出していた。
仕事を途中で抜け出して、本当に毎日、毎日。
初めの頃は、いつでも真っ直ぐな眼差しで自分を気遣おうとするヤスキの存在があまりにも眩し過ぎて、激しい負い目と劣等感からユタカの表情は常に苦渋に満ちたものだった。
もっとも、己の存在の汚らわしさを幼い頃から周囲に叩き込まれて育ってきたユタカが躊躇わずに人前で見せる表情など、そんなものに決まっていたのだが。
もとより笑う事など忘れ去ってしまっていたユタカにとって、芽生え始めた好意を素直に表現する事など、人を殺める事と同じくらいに難しかったのだ。
ヤスキがユタカの独りぼっちの心を支えたくて近付けば近付く程に、その彼に抗い難い好意を感じつつあったユタカの警戒心のレベルは上がっていく。
ユタカは、自分の心をどうにか救い出そうとする目の前のヤスキを、無言の内に拒絶しようとしていた。
己の未来に絶望して常に心の何処かで死を望むユタカが、それでもどうにか己の心の孤独な平穏を守るために、他者全てを拒絶する。本当は救って欲しいのに。縋りたいのに。
ユタカはこれまで、そうやって生きてきたのだ。息絶えた、傷だらけの心を抱えて。
それはまさに、ヤマアラシのジレンマだった。
それでも。
それでも、ヤスキは諦めなかった。
諦めずに、自分も傷を負いながら、それでもユタカの心を支えてやりたくて、踏み止まった。
いつかユタカが笑ってくれる事を、密かに夢見ながら……。
そして驚くべき事に、そんなヤスキの真っ直ぐな心は、ユタカの城塞のような心を覆っていた高くて分厚い壁を、少しずつ溶かしていったのだ。

ユタカが入院してから一週間が経とうとしていたある日の午後。
病室で、無言の二人。
痛々しい沈黙が、その場の空気を支配する。
そんな空気を、壊したかった。
壊して、目の前のユタカに寄り添ってやりたかった。
だからヤスキは、手を差し伸べた。
拒絶されても何度でも、その震える掌をこの手で、包み込んでやろうと思った。
もちろん、ユタカは差し出されたその手を握らない。
首をヤスキが居るのとは反対側の壁の方に向ける事で、拒絶の意思を示す。
そこでヤスキは、覚悟を決めた。
気付かれないように、息をそっと、深く吸い込む。
そして、次の瞬間……。
ヤスキはユタカの手を、握った。
何があっても変わらずに好きで居続ける、そんな存在がちゃんとここに居るのだという事を、ユタカに示してやりたくて。
ユタカは何度も、手を振り払った。
それでも、その度に手を握り返す。
「あぁ……。うぅ……。」
ユタカは呻き始めた。
彼の頭の中ではこの時、二つの気持ちが戦っていた。
嵐が、吹き荒れていた。
ヤスキを好きで仕方ない、ヤスキに縋り付きたいという気持ちと、それを抑え込み、叩き潰そうとする気持ちとが、心の平穏を踏み荒らしながら戦い続けていた。
そして彼は、涙を零す。
獣のように呻きながら、止めどなく涙を溢れさせる。
それでもヤスキは、ユタカの手を離さなかった。
その温もりが、生まれて初めて知る事になったその温もりが、彼の孤独な平穏を、ようやっと突き崩した。
ユタカは、人々が奇異の目を向ける病室の中で、気が付くとその全身に力を込めて、声の限りに絶叫していた。
彼の長い間瓦礫のようだった心はこの瞬間に、ヤスキの温もりによって、ようやっと再生を始めたのだった。

それからのユタカは、ヤスキの目を見るようになった。
恐る恐る、そっと覗き込むようにではあるが、怯えと不安を孕んだ弱々しい眼差しを、逸らさずにユタカには向けるようになったのだ。
ヤスキは嬉しかった。
だから、手を握る。
あれからヤスキはよく、ユタカの手を握るようになった。
二人の間に言葉は無かった。
それどころかまだユタカは、上手に笑う事さえ出来ない。
長い間忘れ去ってしまっていた笑顔の作り方など、思い出す事も出来ない。
それでも覚悟を決めたヤスキの優しさは、人の温もりを知らなかったユタカの孤独な心を、温かく照らした。
それが、ユタカに“寂しさ”とはどういうものなのかを、優しく優しく教え諭す。
知らなかったのだ。
ずっとずっと孤独の底にあったはずのユタカは、それが当たり前になっていたために、まさか自分なんかが“寂しい”状況にあるだなんて、思いも寄らなかったのだ。
自分なんかには、そんな事を思う価値さえもないと思っていた。
それが、今は自分が寂しいのだと、はっきりと分かる。
だから、泣いた。
手を繋がれる度に、号泣した。
そんな事をしたら目の前のヤスキが去っていってしまうかもしれないという激しい不安は、ユタカをますます涙の海へと追いやる。
だが、それでもヤスキは、繋いだ手を離さなかった。
離さずに、いつまでも辛抱強く笑い続けた。
自分の前で生まれたての赤ん坊のように泣き続けるユタカを、この上なく愛おしいと思いながら。

退院の日。
二人はずっと手を繋いでいた。
ユタカは内心では恥ずかしいと思っていたが、今手を離せばヤスキの心までもが離れていってしまうような気がして、必死に手を握り続けた。
ユタカの汗ばんだ手に力がこもる。
そんなユタカの掌を、ヤスキの掌が優しく強く、包み込む。
言葉はなくても、幸せな時間だった。
ただ、今のユタカにはまだ幸せとはどういう感覚なのかが分からないから、胸の奥のツンとした痛みを何処かで愛おしく感じる、そんな自分が居る事に新鮮さを感じてもいた。
二人、並んで歩く並木道。
束の間の温もりが、ユタカの暗闇に閉ざされていた心に、光を齎す。
だが、残酷な運命はこのささやかな幸せをも蹂躙すべく、次の一手を打とうとしていた。

その日の夜。
中学卒業後すぐに働き始め、それ以来古ぼけたアパートの一階の部屋で独り暮らしをしていたユタカが、自らの軋むベッドに身を横たえた後。
逃亡中だったマサルが彼の元に忍び寄る。
その時は、突如訪れた。
突然、窓ガラスが打ち破られる。
慌てて目を覚ますユタカ。
咄嗟の出来事に、事態が飲み込めない。
だがそうしている間にも事態は切迫し、ユタカの身を追い詰めていく。
悲鳴を上げる間も無く喉元にナイフを突き付けられたユタカの命は、最早風前の灯だった。
「ヒデユキのお礼、させてもらうぞ。お前如きの内臓、根こそぎ引き摺り出してやるから、覚悟しておけ!!!」
マサルが叫んだ次の瞬間、ナイフがユタカの下腹部に突き付けられる。
「あ、あ、あ、あぁぁ……。」
あまりの恐怖にユタカは、全身を小刻みに震わせながら、失禁してしまった。
その顔は、何時の間にか流れ出した涙と鼻水とで、見るも無残だ。
そして、運命の時は訪れる。
刃渡りの長いナイフが渾身の力によって突き立てられ、狂気に身を委ねたマサルの腐乱し切った欲望を、根拠の乏しいその過剰な憎しみを、ギラついた金属部分全体に溢れされながら、ユタカの素肌を切り裂いていく。
「ぐがあっ!!があぁーっ!!」
ユタカは全身を強張らせて、狂ったように声を上げた。
大きく開いた傷口からは、腸が顔を覗かせる。
すると何処からとも無く二羽の青い鳥がユタカの肩にそっと舞い降りて、静かに様子を伺う。
だが、既に異常な昂揚感にどっぷりと身を委ねていたマサルは、そんな事など気にも留めずに告げるのだった。
「お前の内臓、根こそぎ引き摺り出してやるぜ、せいぜい楽しめ!」
その言葉に震え上がったユタカは、青い鳥に叫ぶ。
「殺してぇ!!何にもいらないから、殺してぇ!!」
その瞬間だった。
破られた窓からヤスキが現れたのだ。
それも、事態を教えてくれたもう一羽の青い鳥を連れて、たった独りで。
「うわあぁーっ!!!」
ヤスキは、愛するユタカを助けるために、敢えて人を殺める道を選んだ。
震える身体も、溢れる涙も鼻水も、気にならなかった。
ただ目の前のユタカが可哀想で、あまりにも可哀想で、そんなユタカを助けたくて、慣れない恐怖にも負けずに、目の前の異形に向かっていった。
もう、死んでも良かった。
自分など、それで良かった。
ただ、ユタカには笑顔を思い出して欲しかったから、人の温もりを忘れたままでは死なせたくなかったから、もう一度そのチャンスが欲しくて、生きて欲しくて、手に持ったナイフを目の前の異形に突き立てる。
何度も、何度も、何度も。
夢中だった。
ただ、ユタカに幸せになって欲しかったから。
だからヤスキは、ここで精一杯の、最後の勇気を使い果たした。
肩で息をする。
ようやっとヤスキが動きを止めた頃には、長年に渡ってユタカを蹂躙し続けてきた異形は既に、人としての原形を留めていなかった。
ヤスキは、こうして終わった。幕を閉じた。
そんなヤスキを、ユタカはずっと、ずっと見ていた。
だから、自らの最期が近い事が分かっていたから、何時に無く饒舌に、しかしたどたどしく弱々しく、最後の告白をする。
「ヤスくん……ぼく、ね、幸せになってみ、たかったんだ……生まれ変わったら、二人、で、今度こそ一緒、に……幸せに、なろうね……先に、いってるから、早く、おいで……。今まで、ありがとね……。」
こうしてユタカは、遂に幸せの意味を知る事なく、空の彼方へと旅立っていった。
「嫌だよ、嫌だよ、ユタカーっ!!!」
ヤスキの絶叫が、小さな部屋に木霊する。
ふと気が付くと、青い鳥たちは何をするでもなく、そんな二人の様子を伺っていた。
そんな絶望が、目に留まった。
留まってしまった。
だからヤスキは渾身の力を込めて、目の前の新たな異形を、忌まわしき憎き青い鳥を、墜とした。
そう。青い鳥が、墜ちた。
絶叫するヤスキの肉体が、遂に何もせずに飛び去ろうとする異形を、一羽の卑怯な異世界からの使者を、地面へと叩き落とした。
それでも、許せなかった。
許されるべきでなかった。
だからヤスキは、微かに動く異形の残骸を、何度も何度も、何度も踏み付けた。
「畜生、畜生、畜生、畜生!!!」

その時だった。
心を動かされた残った二羽の青い鳥が、ヤスキの心の奥底に眠る願いを、遂に叶えたのだ。
マサルという異形がこの世界から完全に消滅する事と引き換えに、ユタカを生き返らせる青い鳥。
「……あれ、ぼく、生きてる……。」
ヤスキの胸の中で少しずつ少しずつ、その肉体が温もりを灯していく。
「ヤスくん、また会えたね……。良かった……。」
弱々しく、けれども生まれて初めてはっきりと喜びを、幸せを自覚しながら、ユタカはヤスキに微笑んだ。
ユタカが、笑った。
そんなユタカを、ヤスキは強く強く、抱き締める。
力の加減が分からない。
震えが止まらない。
けれどもそんなぎこちないヤスキの胸の中だからこそ、ユタカは幸せだった。
ユタカは、力の限りに泣き叫ぶ愛しいヤスキの胸の中で、これまでの人生の全てを、静かに振り返る。

……それは、ユタカが産声を上げた時から始まった。
物心が付く遥か以前から、ユタカには暗闇へと繋がる一本道しか用意されていなかった。
それは、切なく辛い人生だったろう。
ユタカは、寂れた狭いトイレの個室の中で、まだ中学生だった母親エリカの手によって、憎まれつつ産み落とされた。
「畜生!あんたなんかが生まれてくるから、私がこんなに可哀想じゃんかぁ!」
それが、生まれてくる瞬間にユタカが最初に耳にしたはずの、母親エリカの言葉だった。
それからすぐにユタカは、エリカと離れ離れになった。
男にも棄てられて追い詰められていたエリカは、生まれたばかりのユタカを自宅の前に置き去りにして、失踪してしまう。
まだ子供だったこの時のエリカには、ユタカを育てていく意志も力も、少しも無かったのだ。
そのため、ユタカは父親の顔も母親の温もりも知らないまま、愛しい一人娘を傷付け痛め付けたその存在を疎ましく憎らしく思うエリカの母親マリコによって、執拗な虐待を受けながら育てられていく事になる。
まだ赤ん坊だったユタカが拾われたその時、マリコの手は止め処なく溢れる憎しみで、小刻みに震えていた。
ユタカが笑う。無邪気に笑う。
それが、マリコには許せなかった。
だからマリコは、殴打した。
その温かで柔らかな素肌を狂ったように、何度も、何度も。
そして心の中で密かに誓った。
もう二度とこんな笑顔を見なくて済むように、鬼になると。生まれ変わると。
愛する我が娘の希望に溢れる未来を失わせしめた天からの厄災に、執念の一撃を加え続けるために、己の心を棄て去ると。
この時からユタカは、笑う事を忘れてしまった。
泣く事でしか、自分を表現出来なくなった。
生まれた瞬間からその全てを否定されたユタカの人生は、こうして深い深い暗闇に閉ざされる事になる。

ユタカが眠る。
すやすやと寝息を立てて。
その息遣いを、表情を、マリコは憎しみを込めた眼差しで見下ろす。
そして、己の躓きの多かった人生を涙と共に振り返る。
その様は、さながら劣情に身を窶す悲劇のヒロインだった。
マリコが生まれた時、両親は共に四十を超えていた。
高齢になってから授かった一人娘。
マリコは両親に、それはそれは可愛がられた。
幼い頃の写真が沢山残っている。
そのどれもが、幸せそうな両親の隣で満面の笑みを浮かべるマリコを写したものだった。
だが、マリコにとっての幸せは長くは続かない。
五年後、両親の間に長男が誕生したのだ。
老舗の商店を経営するマリコの両親にとって、跡継ぎとなる長男の誕生は、まさに悲願だった。
両親は新たに家族の一員となった長男を溺愛し、一方で跡継ぎとならないマリコには冷たくなった。
離れていく両親の心を振り向かせたくて、まだ幼かったマリコは必死に笑顔を作る。
だが、無駄だった。
それどころか、成長していくにつれて両親は、マリコに虐待を加えるようになっていく。
どんなに必死に縋り付いても、精一杯の笑顔で気を引こうとしても、もう両親はマリコには微笑む事すらもしない。
幼い頃の幻が眩しかった。
温もりが恋しかった。
もう一度、笑って欲しかった。
それでも現実は、マリコをどんどん追い詰めていく。
だからマリコはいつの頃からか、密かに心に誓うようになった。
いつか自分に女の子が生まれたら、叶わなかった自分の願いの分まで可愛がると。
その一方で、弟への激しい嫉妬は、男という存在への憎しみへと摩り替わっていく。
マリコの人格の根底に燻る劣情は、こうして醸成されていった。
マリコは、父親に殴打されながら、母親に食事さえも満足には与えてもらえない状況にありながら、それでもじっと耐えていた。
この忌まわしい家を飛び出す事が出来る日を、心待ちにしながら……。
そして、運命の春。中学を卒業してすぐに、マリコは家を飛び出した。
友人の家を転々としながら、当ての無いその日暮らしを続ける日々。
そんな刹那的な日常を重ねていく中で、マリコはある男との出逢いを果たす。
その男は、ユウタといった。
東京のとある繁華街で、声を掛けられた。
爽やかな笑顔に、一目惚れした。
マリコは、男を憎んできたはずの自分が男に心を奪われてしまったという事実に驚きを隠せなかったが、男の誘いには乗ってしまった。
それでも初めは、警戒していた。
だが、ユウタに優しくエスコートされている内に、マリコの砂上の楼閣のような警戒心は、音を立てて崩れていく。
気が付くとマリコは、ファッションホテルのダブルベッドの上で、一糸纏わぬ姿のユウタに寄り添っていた。
マリコは、泥酔していた。
そのままマリコが眠ったのを見届けると、ユウタは忍び足で逃げるようにその場を去っていく。
ユウタは、裏の世界では有名なジゴロだったのだ。
マリコに利用価値が無いと分かった以上、その場に留まる理由など何処にも無かった。
後に残されたマリコは、ベッドの上で、己の不幸を嘆いて啜り泣くのだった。
それから何か月かが過ぎた頃……。
体の異変に気が付いたマリコは、慌てて病院に駆け込んだ。
マリコは、妊娠していた。
ユウタの子に、間違い無かった。
その後の検査の結果、生まれてくる子供が女の子だと分かると、マリコは産む事を決意する。
そうして生まれたのが、ユタカの母親、エリカだった。
エリカが生まれてくると、マリコは人が変わったように働いた。
女手一つで愛しい一人娘を立派に成長させるために、己の日常を犠牲にした。
そんな努力の甲斐あって、エリカは母親のマリコに少しずつ似ていきながら、すくすくと成長していった。
エリカが中学校に入学したその日、セーラー服姿の娘を前にしてマリコは、声を上げて泣き崩れた。
ここまで頑張ってきて本当に良かったと、心の底から思った。
だからマリコは、ユタカを決して許さなかった。
彼女にとってユタカとは所詮、己の夢と希望の全てを託した愛しい一人娘を奪っていった、憎き悪魔に過ぎなかったのだ。

マリコは、己の身に降りかかった不幸を一通り振り返ると、すやすやと眠るユタカの隣で、己の身を抱き締めながら号泣していた。
その声に反応して、ユタカが目を覚ます。
ぐずり始めたユタカを前にして、マリコの苛立ちと憎しみは極限にまで達しようとしていた。
次の瞬間、マリコはユタカの身を包んでいた粗末な衣服を引きちぎり、引き裂き破り棄てると、その柔らかな素肌に殴打を加えた。
ユタカの泣き声のトーンが次第に異常なものへと変化しようとも、構う事なく執拗に、何度も何度も己の憎しみと共にその拳を叩き付ける。
どんなに人間らしい表情を見せてもユタカは所詮、マリコのサンドバッグに過ぎなかったのだ。

幼稚園、小学校を通じて、ユタカは寡黙で暗い少年だった。
いつでも空想の世界に逃げ込んで、現実を省みようとしない。
そんなユタカに近付く者など誰もおらず、ユタカは孤独だった。
唯一の救いは、無視される事はままあっても、苛められる事は無かった事だ。
こうして、孤独な平穏と呼ぶべきユタカの静かな日々は、小学校の卒業まで続いた。
家での虐待は苛烈さを増すばかりで、それはユタカの心に深い深い傷を負わせていたが、それでもこの時のユタカにはまだ、せめてもの平穏を与えてくれる、ささやかな救いがあったのだ。

やがて中学校に入学したユタカは、そこで出逢った同級生を一目見て、恋に堕ちる。
それが新たな、そして最大の悲劇の始まりだった。
ユタカは、その同級生の事を想うあまり、食事さえも喉を通らなくなった。
生まれて初めて感じる胸の奥の甘い痛みに戸惑いを感じながら、切なくて苦しくて独り涙を零す。
こうして、マリコの残虐な仕打ちを歯を食い縛って耐え忍ぶ間もユタカは、いつか想い人と結ばれる事を一途に夢見ていた。
そんなある日の事。
学校で、それまで話をした事も無かったその子が、ユタカに優しく声を掛ける。
「良かったらウチに遊びにおいでよ!」
生まれて初めて自分なんかに笑顔を見せてくれた目の前の相手の事が愛おしくて仕方なくて、何も知らないユタカの胸が壊れそうなくらいに高鳴った。
その子の笑顔が自分に向けられているというおよそ考えられない現実が嬉し過ぎて申し訳なさ過ぎて、苦しくてユタカは涙を溢れさせる。
「どうした?」
「マサルくん……ぼく、嬉しい……。」
その瞬間、マサルの掌が静かにそっと、ユタカの前に差し出された。
ユタカは恐る恐る、その手を握る。
それが地獄への片道切符だとも知らずに、ユタカはマサルの手を取ってしまう。
この時マサルは心の片隅で、ユタカの事を可愛いと、胸が壊れそうな程に強く強く思っていた。
ユタカの掌の温かな感触に触れて、思いがけず気が遠くなった。
だがそれは、プライドの高いマサルにとっては、許し難い事だった。
よりにもよって男を、しかもユタカのような冴えない太った男を、本来なら軽蔑するべき存在を、愛おしく思ってしまった自分が、汚らわしくて恥ずかしくて、許せなかった。
自分の初恋はもっと煌びやかなものであるべきだったのに、そう思う気持ちがマサルの苛立ちを極限まで高めていく。
自分が、情けなかった。
すぐにも、暴れ出したかった。
そんな不快な心の嵐を打ち消すために、マサルはユタカを征服しようと決意する。
こうしてマサルのユタカへの深い深い慕情は、激しい憎悪へと摩り替わっていく……。

一時間後。
ユタカはマサルの部屋のベッドの上で、仰向けに横たわっていた。
緊張と恥ずかしさ、そして激しい不安から、その身体は小刻みに震える。
心に余裕が無いから、己の居る部屋の不自然さに気付かない。
人の気配、ベッドの背後の不自然なカーテン……。
警告のサインは送られていたのに、ユタカにはまだ人間で居るためのチャンスが辛うじて与えられていたのに、それなのにその最後のサインでさえも、チャンスでさえも、見逃してしまった。
痛恨の、まさに悲劇だった。
しかし、事態は刻一刻と切迫しているのに、当のユタカは虚ろな目で、愛しいマサルの肉体が描く気の遠くなるようなシルエットを追い掛けるのみ。
ユタカの意識は既に曇り霞んでいたのだ。
ユタカは、目の前の見事な肉体に遠い感情を抱いて、深い溜め息を吐く。
そんなユタカを、マサルは強く強く、強く抱き締めた。
あまりにも愛おしくて、それゆえに憎らしくて、力の加減が出来ない。
震える拳を握り締めて、歯を食い縛って、狂おしくユタカの温もりを貪る。
怒りと憎しみが、沸々と湧き上がる。
遂にマサルは、ユタカの身を覆っていた衣服を苛立ちと共に破り棄てると、その痣だらけの裸体に指を、そして舌を這わした。
思えばここまで、長かった。
マサルは、ユタカを初めて目にした時から、その心の内に激しい劣情を抱え込んでいたのだ。
ユタカの裸体に憧れ、それを夢にまで見る自分と、ユタカ如き劣った存在にそんな恥ずかしくて汚らわしい感情を抱く事が悔しくて許せない自分。
マサルは、爆発しそうな心を持て余しながら、そしてユタカの存在を片時も頭の中から消し去る事が出来ないまま、いつでも気が付くと、狂ったように自慰行為を繰り返していたのだ。
何度も、何度も、遂に何も出なくなっても、それでも何度も。
そうして、それすらも苦痛になると、今度は自らの頭を枕に何度も打ち付ける。
呻き声を上げながら、狂ったように。
その時から、この日が来るのをずっとずっと、待ち侘びていたのだ。
今、ユタカはマサルの下に、その全てを曝け出している。
マサルによってもたらされる激しい快楽に没入しながら、次第に我を忘れていく。
そんなユタカのあられもない痴態は、マサルの意識を一瞬の内に沸騰させた。
たまらなくなって、マサルはユタカの唇に舌をねじ込み、蹂躙する。
ユタカは、霞む意識の中マサルの背中に強く強くしがみ付いて、涙を零す。
そう、この時のユタカの心にはまだ、血が通っていたのだ。
ユタカはまだ、人間だった。
一方のマサルは、生まれて初めての快楽に激しく身悶えるそんなユタカを、冷酷さと激しい劣情とを孕んだ目付きで見下ろしながら、なおも執拗に責め続ける。
マサルはこの時、性的興奮と怒りの絶頂にあった。
殺めたい程の憎悪と我を忘れる程の性的興奮、心が軋む程の愛おしさとが綯い交ぜになって、行き場を無くしていく。
そんなマサルの目の前で、あらゆる恥ずかしい場所を、性感帯を、執拗に責められ続けてユタカの局部は、上下に激しく動き続けながらそのテラテラとした鈍い輝きを増していった。
ユタカは、夢中だった。
マサルの怒張を受け入れて、獣のような呻き声を上げながら、ユタカは徐々に上り詰めていく。
一糸纏わぬ姿で、その全てを余すところなく曝け出して、ユタカは全身を強張らせて、快楽の海に深く深く沈んでいく。
そんなユタカの姿は、マサルの劣情を益々増幅させていった。
堪らずにマサルは、ユタカの耳元で、震える声で囁く。
それは、己の許し難い、本当に許し難い、屈辱的な本心だった。
「愛してるよ、愛してるよ、ユタカ……。」
マサルの口が醜く動く。
それに合わせて、大量の白濁した液体がユタカの局部からひとりでに、止め処なく溢れ出していく。
ユタカは、仰け反って叫んでいた。
その瞬間だった。
二つの部屋を仕切っていた、ベッドの背後の不自然なカーテンが、突如開いた。
その奥には、マサルの大勢の不良仲間が息を潜めて待機していたのだ。
二人のSEXの一部始終は、ビデオカメラで撮影されていた。
次第に大きくなっていく、ギャラリーの下卑た笑い声。
その中でマサルだけが冷酷さと苦渋に満ちた表情を浮かべる。
ユタカはそんな絶望を、目の当たりにしてしまった。
狂ったように叫びながら、涙と鼻水を垂れ流しながら、ユタカはベッドに頭を打ち付ける。
何度も、何度も。
その間もビデオカメラは回り続け、ユタカの狂態を映し続ける。
やがてマサルは無言で再び、ユタカを貫いた。
局部を激しく反応させ、呻き声を上げるユタカ。
マサルが腰を打ち付ける度に、ユタカの情けない局部は激しく反応を繰り返す。
体は、反応している。
マサルを、受け入れている。
しかも心の何処かで、こんな状況になってもなお、マサルの事を愛おしく感じている。
だが、そんな激しい屈辱を、心が許せなかった。
ユタカは次第に狂ったような奇声を大きくしていきながら、マサルの下でまるで痙攣発作を起こした難病患者のように、その体を激しく波打たせた。
マサルの目の前でユタカが、壊れていく。
それでも。
マサルは、ユタカを陵辱する事を止めなかった。
夢中だったのだ。
性的興奮と憎悪の坩堝にあったこの時のマサルには、自らの腰の動きを止める事など到底出来なかった。
そして、ユタカは再度屈辱的な姿を、大勢のギャラリーに曝す事になる。
指一本触っていないのに、触られてもいないのに、激しく反応を続けるユタカの局部から、大量の白濁した液体が溢れ出したのだ。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だーっ!!!」
ユタカは涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして、身を仰け反らせて絶叫した。
そんなユタカの姿を見て、マサルの欲望と自尊心はようやく満たされる。
用の済んだユタカは、一糸纏わぬ姿でマサルの部屋の外に放り出されると、独り途方に暮れていた。
その夜遅く。
自宅に戻り、ようやく独りになったユタカは、台所から持ち込んだ古ぼけたペティナイフを震える手で握り締めると、躊躇する事なく自らの手首にあてがった。
そのまま、何かに取り憑かれたかのようにそれをスライドさせ始めるユタカ。
鮮血が飛び散っても、鋭い痛みが全身を駆け抜けても、それでもユタカは止めなかった。
汚らわしくこの上なく恥ずかしい、何があっても許されない己の存在に、今度こそ止めを刺すために。
傷口は大きく拡がり、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔からは生気が喪われていく。
それでも。
それでも、ユタカは死ねなかった。
異変に気が付いたマリコが部屋に飛び込む。
「あんたは死なせない!こんなに簡単に死なせない!生きて、もっともっと苦しめ!娘の分まで苦しめ!苦しめーっ!」
結局ユタカは、何処までも無力だった。
遠のいていく意識の中で、マリコの声だけがしつこく木霊するのを、ユタカは踏み躙られた心にしっかりと焼き付けた。
絶望の底にありながら、ユタカはそれでも、死ぬ事さえも許されなかったのだ。
この時のユタカは、まさに蹂躙された瓦礫のようだった。
そうして。
ユタカの心は、息絶えた。
ひっそりと、誰にも省みられる事なく、ようやっと息絶えた。
そうする事によってしか自分を守る事が出来なかったユタカは、それによって孤独な平穏を獲得し、マサルという最後のよすがを得ようとしていた。
辛抱強く何度でも息を吹き返そうとしていたその心は、息絶える事によって、繰り返される不幸の連鎖からようやっと開放されたのだ。
それからのユタカは、泣く事さえも忘れて、ただの血の通わない肉の塊にも等しい存在だった。
殴られても蹴られても、服を引き千切られても陵辱されても、ユタカの心はもう微塵も、ピクリとも動かなかった。
悲しいとさえ思わなくなった。
中学卒業間際に虐待の罪でマリコが逮捕されても、それでもユタカは喜びも苦々しささえも、何も感じなかった。
マサルの行為はエスカレートを続け、増え続けるギャラリーの前で性的暴行とリンチとが交互に繰り広げられていく事になるのだが、それでもユタカは自ら逃げ出す事さえもしなかった。
もうユタカは悲しくなかった。
ただ、死にたかった。
そして、マサルが愛おしかった。
どんな辱めを受けても、殴られても蹴られても、それでも決して嫌いにはなれなかった。
だからユタカはマサルの手で、その手で、汚らわしく恥ずかしい己の息の根を、止めて欲しかったのだ。
それは、ユタカがたった一つだけ心の底から願った、ほんのささやかな我儘だった。
ユタカは、愛しいマサルの腐乱した欲望の捌け口としてのみ、存在を許されていたから、そしてそれは己の唯一の救いでありささやかな誇りでさえあったから、だからこそ己の身がマサル以外の人間の手に掛かる事を、頑なに拒絶し続けたのである。
マリコの手に掛かる事など、到底受け入れられなかった。
幸せを知らないユタカにとって、マサルこそが、蹂躙し尽くされた瓦礫のような己の心の、本当に全てだった。
苦難の末に孤独な平穏を齎してくれた、最後のよすがだった。
ユタカはどんなに追い込まれても、どんなに恥ずかしくても、どんなに苦痛でも、心の何処かで確かに、マサルに感謝していたのだ。
それは、愛しいマサルに陵辱される事で、殴られる事で、蹴られる事で、生きている事を確かに、実感出来たから。
いつか殺してくれる事を夢見ながら、マサルに征服される事で、己の孤独な平穏を辛うじて保っていたのである。
それでもいつか、こんな孤独で汚辱に塗れた、苦難に満ちた日々から、抜け出したかった。
冷え切った、息絶えた己の心の残骸に、もう一度だけ温もりを灯して欲しかった。
誰かに、幸せの意味を教えて欲しかった。
誰かに、優しく抱き締めて欲しかった。
心の片隅で確かに、そう思っていた。
ユタカはずっとずっと、寂しかったのである。
だから、ヤスキにとってユタカが天使であったように、ユタカにとってもヤスキは、己の身に絡まった赤い糸を優しく解き、温かな希望の光でその心を生き返らせた、掛け替えの無い天使だった。
ヤスキに出会って初めて、ユタカはマサルに対する劣情と畏怖から、開放されたのだ。
長い暗闇のトンネルを抜けて、悲恋を乗り越えて、ユタカはやっと、運命の出逢いを果たした。
ユタカはようやく、始まったのだ。

……気が付くとヤスキの温かな胸の中でユタカは、これまでにない安らぎを感じながら、声を上げて泣いていた。
飛び散った大量の血液と異形の残骸とで無残な姿に変わり果てていたはずのその部屋は、青い鳥たちの力によって、何事も無かったかのようだ。
マサルは失踪した事になり、もうヤスキに罪が掛かる事も無い。

頭上では、青い鳥たちが舞っていた。
まるでまだ若い二人を見下ろすように悠然と、冷徹さをも孕んだ軌跡を描く。
それでも、今の二人には固く結ばれた絆があるから、怖くはなかった。
不意に、互いを握る手の力を強める二人。
少しだけ逞しくなった二人は、窓の外からの冷たい向かい風を感じながらも、それでも、互いの小さな手と手を取り合って、強く、強く、真っ直ぐに生きていこうとするのだった。

Bluebird シリーズの中核作品。
という訳で、気合いは入っていたんですけどねぇ。
物語の中盤にクライマックスが来てしまった。
後はひたすら、場面転換を伴う回想シーン。
構成としてどうなのか、というのはあります。
主人公の名前がユタカなのは、自分が豊かではなかったからです。
だから躊躇なく不幸に出来る、という訳で。
また、他の作品にも見られる事ですが、日本人なのに名前がカタカナなのは、ある種のドライさを醸したかったからです。
まぁ不幸の佃煮状態なので、今考えるとちょっと可哀想。
文章自体も佃煮のよう。
ハッピーエンドなのは予定通りでしたが、これは救いになっていると思っています。
でもシリアスさを追求していたために、ハッピーエンドの場面はちょろっと出て来るだけなのですよね。
青い鳥は地球上の神をも超越する存在ではありますが、各々が個別の意思に従って行動している、というのは示せました。
多神教的な価値観に基づいています。
良くも悪くもオリジナリティはあると思っています。
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