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豆柴日記 by [SU]

はじめまして、皆さん!
ぼくは太っちょ・みぃ君に飼われている豆柴の太郎。
みぃ君はちょっとものぐさな大学一年生。
ただいま、ペット可のアパートで独り暮らし中。
実はぼくは、人間ではみぃ君とだけ会話が出来る。
人間以外の動物達とは普通に会話が出来たりもする。
そんな訳で、みぃ君や動物達とぼく太郎との、短い日常のお話の、はじまりはじまりーー。

[一日目 : 語り - 太郎]

「起きてみぃ君、講義に間に合わなくなるよ!」
ぼくはみぃ君を必死に起こす。
ここはもちろん、みぃ君に話しかけるのだが、他の人間達にはワンワンと吠えているようにしか聞こえない。
「あ、太郎おはょ。ご飯の時間だね。待ってて。」
みぃ君は布団からのっそりと起き出すと、いつものトレイにドッグフードを入れてくれる。
「ありがとう!さ、みぃ君も早く支度して!」
こんな時、見ていて危機感が薄いからか、みぃ君の事が心配になる。
でも、当のみぃ君はどこ吹く風。
のんびり悠然と支度をするのだ。
いつもの事だ。
「さ、早く早く!」
ぼくはみぃ君を追い立てるように声を上げる。
「分かった、分かったょ。」
みぃ君、やっと観念したのかせかせかと支度をし始めるのだった。

「じゃ、行ってくるね。留守番お願いね。」
「ラジャー!いってらっしゃーい!」
こうしてひとまず、任務完了。
ふぅ。
朝から疲れるのである。
しばしのんびり。
すると。
ここは一階なので、時折動物の来訪者がある。
今日も仲良しの小さな蛙さんが、窓辺でぼくを呼んでいる。
「ねぇねぇ太郎君、ちょっと来てくれるかい?」
蛙さんが待っているので、ぼくは外に出る事にする。
実はぼく、ちょっとした超能力を使える。
これを知っている人間はみぃ君だけ。
バレると厄介なので、他の人間達には秘密なのだ。
ちなみに動物達はこの事をみんな知っている。
だからこうして、頼られるのだ。
ぼくは閉まっているサッシを超能力で開けると、ピョンと外に飛び出して、サッシを閉める。
鍵もバッチリ。

「どうしたんだい、蛙さん。」
まずは事情を聞かねば。
すると蛙さん、必死の形相で。
「近くの池に棲む仲良しの鴨さんが、人間に虐められて怪我をしちゃったんだ。治してくれないかな?」
これは大変だ。
すぐに向かわなければ。
ぼくは蛙さんを背中に乗せて、現場まで走り出す。
着くと鴨さん、血を流していた。
見るからに痛そうだ。
「痛いよ、痛いよ。」
鴨さん、泣いている。
可哀想なので、すぐに治してあげる事にした。
ぼくは鴨さんへと、力を送り込む。
三分後。
「治ったよ!もうすっかり大丈夫!太郎君、ありがとね!」
鴨さん、元気になった。
嬉しそうに跳ね回っている。
良かった。

その後ぼくと蛙さんと鴨さんは、しばらくの間一緒に遊んだ。
気が付くと、いつの間にか陽が傾いている。
これはいけない。
みぃ君、きっと心配している。
いや、そうでもないか。
いつもの事だし。
でも、帰らねば。
「じゃあ、ぼく帰るね。今度は気を付けるんだよ、鴨さん。蛙さんも、またね。」
「じゃあねー!」
「ありがとねー!」

帰宅。
「ただいまー。」
「お帰り。心配したょ。ご飯の時間だょ。さ、おいで。」
言葉とは裏腹に、別に心配していないような眠たい顔。
でも、これもいつもの事。
たぶん慣れっこなのだが、心配はしてくれているようなのだ。
なので、こちらとしても気分は悪くない。
たくさん動いたのでお腹が空いている。
一心不乱にご飯を食べるぼく。
たっぷりのご飯をペロリと平らげたぼくは、みぃ君にすり寄ってみる。
「少し汚れてるね。お風呂、入ろうか。」
あれ、そんなつもりではなかったのだが。
おかしい。
間違っている。
まるで嵌められた気分。
「嫌だ、嫌だ。」
こんな時はとりあえずゴネてみるのだが。
「さ、行こうか。」
持ち上げられてしまい、ジ・エンド。
無念。
お風呂場へと直行。
待っているのは、辛い時間。
ただ耐えるのみ。

で、終わったのである。
「偉いね。今日もおとなしくしてたね。見違えたょ。」
みぃ君にハグされた。
嫌なことも終わったし、極楽気分だ。
夜。
寄り添い合って眠るぼく達。
みぃ君、スースーと先に寝息を立てている。
ぼくももうすぐ、夢の中。
明日はみぃ君の、ちょっと遅い初恋のお話。
今日はこれにて、おやすみなさい。

[二日目 : 語り - みぃ]

朝。
気怠い。
いつもの事だけど。
もう少し眠っていようか。
そんな時に限って、太郎がうるさいうるさい。
「分かったょ。今起きるから。」
のそのそと起き上がると、ぼくは台所で太郎の餌の支度をする。
毎朝の日課だ。
「ほら、餌だょ。ゆっくりお食べ。」
自分の支度も、ぼちぼち始める。

で。
大学に到着。
特にこれといった友人も居ないぼくにとっては、暇で退屈な日常の始まりだ。
まぁ、親の仕送りで生活している身分だから、せめて留年はしないようにしなければ。
あるのは、その程度のモチベーションである。

講義を受けて。
眠い。
「怠いな。フケようか。」
まぁでも、ここは我慢。
親の手前。

さて、お昼である。
カフェテリアへと向かう。
食べるのは、大盛りパスタとカツカレー。
どちらもセットなので、サラダとスープ、それぞれ二個付き。
ついでに、コーラも頼む。
モリモリ食べる。
これがないと、力が入らない。
自慢じゃないが、燃費は悪い。
頗る。

食事を終えると、再びの講義。
結構、真面目に出ているのだ。
ノートを借りられる友人も居ない訳で。
それはまぁ、必死なのだ。
結局の所、要領が悪いのかもしれない。
どうやらその辺の感覚が、少し鈍いようだ。

そして、帰宅。
今日もつまらなかった。
お腹が空いた。
ピザでも頼もう。
太郎の餌も用意。
少し早いが、何となく、ついでに。
「太郎、留守番ご苦労さま。餌だょ。何か変わりはなかったかい?」
とりあえず、聞いてみる。
「大丈夫だったよ、みぃ君。いつも餌、ありがとう!」
一安心。

で、ピザである。
宅配ピザを、デリバリーで注文。
早速お電話。
パパゲア・トルチンチーヤ味のLサイズを二枚。
大好物なのだ。
健康の事も考えて、シーザーサラダも一緒に頼む。

二十分後。
到着。
インターホンが鳴るので、ドアを開ける。
ドキンとした。
いつもの人と違う。
目を奪われた。
目の前に現れたのは、好みのタイプど真ん中の、これまでに見たどの男とも違う、素敵過ぎる配達スタッフだった。
頭がふわふわする。
ぼく今、たぶん、挙動不審だ。
暫し、呆然。
これがぼくの、初恋だった。
首を傾げながらも帰ってゆくスタッフ。
後に取り残されたのは、抜け殻のようなぼく。
どうするか。
ここはまず、飼い犬詣でだ。

「ねぇ太郎。お願いがあるんだけど。」
「何だい、みぃ君。」
「実はね。今帰っていった宅配ピザのスタッフの人を、ぼく好きになっちゃったみたいなんだ。どうにかならないかな……。」

もう涙目である。
この時ばかりは、太郎が神様に見えて仕方なかった。
で、太郎。
「うーん。あんまり気が進まないけど、少し運命の糸を手繰り寄せてみようか。やってみるね。待ってて。」

十分後。
インターホンが再び鳴った。
慌てて玄関へと駆け出すぼく。
目の前には、さっきのスタッフさん。
ドギマギして何も言えないぼくに彼、フレンチ・キスをした。
ぼくは、抱き締めた。
離したくない、離れない。
そんな思いで、ぼくはいっぱいだった。
そうした中で、彼は訥々と言葉を紡ぎ出す。

「実はぼく、半年前に街で君を見かけて、その時から好きになっちゃってたんだ。なかなか言う機会もなくて、困ってたんだけど、今日たまたま会って、後から勇気が湧いて来て……。舞い戻って来たんだ。良かったら付き合おう。明日の夕方にまた来るから、その時に返事を聞かせて欲しい。今日はまだ仕事があるから、これで。」

去ってゆく彼を見送るぼく。
それはもう、くらくらする。
それからは、何も手につかない状態が続いた。
夜も眠れない。
心配した太郎、付きっ切りで傍に居てくれる。
結局その日は、丑三つ時になってようやく、眠りに就いた。

[三日目 : 語り - みぃ]

また朝が来た。
今日は大切な日。
この状況、決して悪くはないのだ。
だから落ち着きたい所なのだが、そわそわしてしまう。
太郎は言う。
「記憶操作は多少はしたけど、あの人、元からみぃ君の事は好みのタイプだったんだ。だから、あんまり思い詰めないようにね。悪い事をしている訳ではないんだし、相思相愛なんだしさ。」
心強い言葉だった。
ぼくは、嬉しかった。
罪悪感があったのだ。
だが、元から好みで居てくれたなら、気を患う必要もない。
まぁここはとりあえず、大学には行かねば。
本当は休みたい所だが、家に居てもそわそわするだけなのだ。
講義でも受けていれば、多少は気が紛れる。

という訳で。
惰性で講義を受けて。
お昼。
カフェテリアで。
ノエヴェ・プーラントなる料理を発見。
味の想像がつかない。
プーラントって作曲家じゃなかったか。
プーランクという作曲家も居た筈だし。
まぁここは試しに、一人前だけ。
もう一つは、ポーク・カツレツの大盛りで。

一口目。
まずはノエヴェ・プーラントから。
うーん。
不味くはないのだが。
何というか、微妙。
一人なので、黙々と食べる。

そこへやって来たのは、同い年位の青年。
「やぁ!時々見かけるけど、名前はなんていうの?俺の名前は彦助。ノエヴェ・プーラント、頼んだんだー。俺がリクエストしたからメニューに載ったんだ。美味しい?」
「ぼくの名前は三乃介。みぃでいいょ。なんかこのメニュー、味がぼんやりとしていて美味しいんだか不味いんだか。悪いけど。」
ぼくがそう言うと彦助、目の前の座席に座った。
「そっか。それは残念。レストランで食べるともっと美味しいんだけどね。それはそうと、友達にならない?これも何かの縁だし。隠すつもりもないから言うけど、ぼくゲイなんだ。それでもよければ。」
ぼくと友達になりたいとは、誠に以って酔狂な事だ。
が、異存はない。
「ぼくもゲイだょ。よろしくね。」
片手を差し出す。
すると、両手が出て来た。
ガッチリと握手。
かくして、友情はここに結ばれた。

それはそうと彦助、よく見ると可愛い顔をしている。
や、我ながら節操がないな。
やめておこう。
そんな事を思っていたのが伝わったのか、案の定妙な展開になってしまう。
「みぃ君、付き合っている人、居るの?ぼくは今、フリーなんだ。」
仕方ない。
ここは、はっきりさせておくしか。

「ごめん。先の事は分からないけど、今はとりあえず間に合ってる。」
「そっか、残念。でも、今度一緒に飯でも行こうよ。L●NEのID、交換しよっか。」
サバサバしている。
こういうのは、有り難い。
でも、L●NEはなぁ。
「ごめん!ぼく、ID持ってない。メアドと携帯の番号でいい?」
「いいよ。オッケー!」
こんな感じで交換終了。
しかし今時、L●NEのIDも持っていない大学生って、どうなんだろうか?
我ながら、自分の事が心配になる。
まぁ、今まではそもそも、必要もなかった訳だが。

でもこれで、講義の代返とか、ノートの貸し借りとかが出来る。
怠けたいというのもあるが、そういうのに憧れていたのだ。
それからは、話に花が咲いた。
やがて話も終え、食事も終えて。
そろそろ休み時間も終わりだ。
二人して、とりあえず講義へ。
「この教授の授業、退屈だよな。」
「お腹もいっぱいだし、眠くなるよね。」

その後。
我慢し切れずにウトウトしていると。
彦助がつねってくれた。
有り難い。
授業も終わり、ひとまず解散。

帰宅。
そろそろ夕方も近い。
いよいよそわそわするぼく。
が。
想い人、待てど暮らせどやっては来ない。
午後十時。
すっかり諦めて、早々に寝る支度を始める。
今夜は独り、拗ねてみようか。

するとーー。
ピンポーン♪
インターホンが鳴るので、慌てて玄関のドアを開ける。
想い人、到着。
「やぁ、遅くなってごめん。友達に捕まっちゃって、飲んでた。昨日の返事だけど、考えてくれたかな?」
ほろ酔いの想い人、ほのかに紅い顔もいい感じ。
そんな事を思っていると、太郎が騒ぎ始める。
「みぃ君駄目!その人四股掛けてる!悪い人!」
言うなり、撫でようとした想い人の手をガブリ。

「うわぁ、何だこの犬!うわぁー!」
一目散に逃げてゆく想い人。
事態が飲み込めない。
何が何だか分からない。
悲しいぃ。

「みぃ君ごめんね。昨日の内に気付いておくべきだったよ。あの人は悪い人。もっといい人が近くに居るよ。心当たりがあるんじゃないかな?」
「……もしかして、彦助?」
「そう、そう!きっと上手く行くよ!明日、告白しちゃいなよ!」
太郎、嬉しそうにクルクル回る。
面白い。
ちょっと落ち着いた。
「さ、太郎おいで。寝るょ。」
ぼく達は横になった。
今日は太郎、いつもよりも甘えん坊だ。
ぴったりと寄り添って、ぼくの顔をペロペロ舐める。
という訳で、今夜はこれにておやすみなさい。

[四日目 : 語り - みぃ]

時刻はお昼。
大学のキャンパスで。
呼び出した彦助に、ぼくは告げた。
「昨日の話だけど、ぼくと好きだった人、終わっちゃってさ。その人四股かけてたんだ。もし良かったらお付き合いしない?一緒に楽しくやろうょ。」
さり気ない告白のつもり。
さぁどうなるか。

次の瞬間。
ぼくは、彦助の大きな身体で抱き締められていた。
「ごめん。ちょっと痛い。」
ぼくがそう言うと、彦助、はにかんだ笑みで頭を掻いた。
こうしてぼく達の関係は、一日にして友達から恋人へと変わったのだった。

それはそうと。
お腹が空いたのである。
昼食の時間なのである。
お腹には正直なぼく達。
ぼくは彦助と連れ立ってカフェテリアへと向かった。

「俺はノエヴェ・プーラントとビフテキ定食。みぃは?」
「ぼくもおんなじでいいや。ノエヴェ・プーラント、また食べてみたくなったょ。後を引くよね、あれ。何となく。」
「いいでしょ、あれ!やったね!」
彦助、嬉しそう。
そんな顔も可愛くて、今、ぼく幸せ。
それにしてもノエヴェ・プーラント、改めて食べてみると、悪くない。
むしろ、結構いいのだ。
「ノエヴェ・プーラント、美味しいね。食べれば食べる程いい感じになってゆく、みたいな。」
「良かった!みぃのお勧めは?料理で。何かある?」
「今日講義が終わったらウチにおいでよ。パパゲア・トルチンチーヤ味のピザが美味しいょ。豆柴が居るけど、犬は大丈夫?」
「平気だよ。行きたい!パパゲア・トルチンチーヤ味かぁ。食べた事ないや。楽しみにしておこう。」

で。
講義を終えて。
部屋に着いたぼく達。
「へぇ、綺麗なアパートだね。でもちょっと散らかってるね。片付けたら?手伝うよ。」
「ほんとに?うわぁ、恥ずかしいゃ。でも、助かるょ。ありがとう!」
ここで太郎、一言。
「普段片付けサボっていた罰だね。」
ペロンと舌を出すぼく。
すると、何と!
「い、今、この犬、喋ったよな!?」
何と!
ぼく以外にも太郎の言葉が分かる人間がいたのだ。
正直、腰が抜けそうになった。
とはいえ、とりあえずの所は、事情を説明せねば。
話をしてみると、案外あっさりと受け入れてくれた。
やはりサバサバしているのだ。
実に有り難い。

ここで、彦助の思いがけない一言。
「俺達、部屋の片付けが終わったらおSEXに励むんだからな。盗み聞きするなよ。」
「大丈夫。聞きたくないからね。」
太郎は何処吹く風。
たぶん、ぼくの顔は今、真っ紅に染まっている事だろう。

その晩、初体験を済ませたぼく達は、遅めの夕食を摂る事にした。
でも、その前に。
「はい、太郎。おとなしくしてたね、偉いね。さ、夕食だょ。」
「みぃ君、声大きい!」
「ふぅん、そ。じゃ、餌なしね。」
「何にも聞こえなかったよ、みぃ君。」
「さ、たくさんお食べ。」
太郎との付き合いももう少しで一年になる。
こんな風なやり取りも、たまにはあるのだ。
で、パパゲア・トルチンチーヤ味のピザである。
今日はサラダの他にもサイドメニューを注文。
コルコサッサだ。
最近発売になった新メニューである。
これがまた、実にうんまいのだ。
「本当に美味いな、これ。また一緒に食べような。」
「うん!」
二人して、一心不乱に黙々と食べる。
あっという間に完食。
流石はデブ二人と言うべきか。

さて。
都合のいい事に明日は大学が休みなのである。
お互い一人暮らし、気兼ねもない。
ぼくは彦助に、泊まっていくように提案した。
返事はもちろんOK。
こんな事もあろうかと、布団は予備があるのだ。
これまで、泊まりの来客なんて一度もなかったのにね。
妄想癖があるのかも、自分。
でも、今回こうして役に立ったのだから、あながち間違いでもなかった、と言う事だろう。
ちなみにこのアパート、間取りは1DK。
今晩は太郎には、ダイニングで寝てもらう事にしよう。
「太郎、ごめんね。ちょっとの辛抱だょ。」
「うぅん、平気!いい人と出逢えて、良かったね。」
太郎、またもやクルクル回る。
ただ今ぼく達、絶好調です!
今夜はこれにて、おやすみなさい。

[五日目 : 語り - みぃ]

今日は彦助と二人で朝から外出。
彦助の車でアウトレットモールへ行くのだ。
まずは彦助に車を取りに行ってもらう。
特にアテがある訳ではない。
お金のない大学生が一日居られる場所としては、なかなかに優秀なのだ。
まぁそれだけなのである。

到着。
服を見る。
何処のお店にも、可愛い服がいっぱい。
でも、浮つく彦助とは対照的に、斜に構えるぼく。
「それ、どうせ入らないょ。サイズがないもん。」
「あ!?そうだった……。」
デブなのだから、その辺りの覚悟は、あらかじめしておくべきなのである。
結局、三時間も歩いて。
もうクタクタ。
アウトドアブランドのお店で辛うじてサイズの合う服をゲット。
元値が高いので、アウトレットモールとはいえ、割高だ。
だから、ありそうなのは分かっていても、敢えて避けていたのだが。
他に選択肢はないのであるから、仕方ない。
まぁ定価よりはだいぶ安いのだから、満足すべきだろう。

で。
「腹減ったー!」
「ほんと、お腹空いたねー。」
まぁ、こうなるのである。
そうなると、探すのはフードコートだ。
「マ◎ドナルドでいいか?」
「うん。この際何処でもー。」
二人してビッグマッ◎二個ずつとLサイズのポテト一つずつ、それにナゲットとコーラLサイズを頼む。
食べながら。
「で、この後どうする?」
時刻は午後一時。
まだ夕方までには時間がある。
「買い物も終えちゃったし、海沿いでもドライブする?」
「賛成!」

彦助は運転がとても上手い。
見ていて分かる。
車もなく、ペーパードライバーになりつつあるぼくとは、大違いだ。

さて。
海が近い。
次の長いトンネルを抜けると。
いよいよ海沿いを走る事になる。
「そろそろだな。」
彦助の合図。

さぁ、海だ。
景色が素晴らしい。
太郎にも見せたかった。
と。
不意に、フレンチ・キス。
「わ、脇見運転は、危ないんだかんね!」
でも、嬉しい。
胸がキュンとする。
こんな恋なら、いつまでもしていたいーー。
そう思って、目の前に広がる景色を脳裏に刻み付けるのだった。

帰宅。
ひとまず、彦助とは解散。
今夜辺り、両親が様子を見に来るといけない、というので。
明日、また逢えるだろう。
「太郎、留守番ご苦労さま。色々、ありがとうね。」
珍しくガッチリとハグをしてみた。
「いいんだよ、みぃ君。それよりちょっと苦しいかも。」
あぁ、いけない。
「もう夕方だね。今、餌をあげるから、待ってて。」
帰って来ると、いつも通りの日常が待っていた。
でも、これも幸せの大切な一ページ。
明日は何処へ行こう、そう思うぼくには、きっと幸せな未来が待っている。
そう信じられたから、ぼくは、掴んだ恋を離さないでおこう、そう思ったんだ。

[六日目 : 語り - 太郎]

今日は日曜日。
彦助が来ている。
みぃ君と、仲睦まじくお喋り。
せっかくなので、仲良しの動物みんなで、二人のお祝いをしよう。
「ぼく、近くの池まで散歩に行ってくる。みぃ君と彦助は待ってて。」
「了解。気を付けるんだょ。」

まずは蛙さんに声を掛ける。
「いいよ。太郎君にはお世話になっているからね。鴨さんも誘うといいよ。」
で、鴨さんの元へ。
「オッケー!太郎君の誘いなら、大歓迎だよ!ひよこさんも誘いなよ。」
という訳で、ひよこさんも誘って。
アパートに戻るのだ。
連れ立って。

戻ってみると、今にもキスでもしてしまいそうな距離感の二人が、目の前に。
間が悪いのである。
でもま、いいか。
サッシを超能力で開けると、みんなで中に入る。
蛙さんや鴨さん、ひよこさんの言葉は二人には分からないから、ぼくが通訳をするのだ。
「おめでとう、みぃ君!彦助!」
みんなで歌って、踊る。
楽しい時間。
すっかりみんな仲間だ。
これからも、何だかんだでこんな感じの毎日が続くのだろう。
みぃ君に飼われて良かった、本当に心からそう思っている。
だからこれからも、みぃ君と彦助が幸せになるための手伝いをするのだ。
言ってみれば恩返し、かな。
道は広く長く続いている。
みぃ君達とならきっと上手く行く、そう思った。
作品は終わっても、豆柴日記は終わらないーー。
そう思った、初夏の事だった。

豆柴の登場するお話を書いてみたかったのと、パパゲア・トルチンチーヤという造語を使ってみたかったのと。
その二つが、このお話を作る上では欠かせない重要な要素でした。
というか、他にこのお話を作った理由らしい理由はなかったかも。
シリーズ化の予定はありません。
残念ながら。
成り行きでつらつらと書いたお話。
反則技ですが、例によってパート毎に語り部が変わります。
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