FC2ブログ

海松色の日常 外伝 - The Seasons : Spring 2 [Theme Park Romance]

先日のお花見の時にも思っていたのだが、桜もすっかり散ってしまい、これからは夏のイベントについて真剣に考えなければならない。
来年は就職活動真っ只中、行くとしても日帰りで江ノ島がせいぜいだろう。
お金と語学力がないので海外は厳しいけれど、この夏休みを利用して国内二泊三日の旅行位はしておきたい。
猛くんとの思い出作りは、自分にとっては本当に大事な事なのだ。
今はお昼休みで食事中。
相談にはもってこいの時間だ。
「たーけーるーくーん!夏休み、一緒に旅行に行きたいんだけど、何処がいい?お金の問題もあるから二泊三日位がいいかなって思っているよ。」
「それならデ●ズニーリゾート!いまだにシーへは行った事ないから、行ってみたい!」
へぇ、そんな趣味があっただなんて、猛くん。
知らなかったょ。
「でもパーク混んでそう。ホテルの予約にしても、今からでは取れるかどうか。違う所にしない?炎天下、軽食を買うだけで三十分待ちとか勘弁して欲しいし。混雑のせいでお互いに不機嫌になって喧嘩だとか、やだもん。」
「そっか、そうだよね〜。じゃあ和倉は?加賀◯、サービスいいらしいよ。」
加賀◯……予算的に二泊は可能なのだろうか?一泊にするという手もあるが、それではつまらない。
しばしネットを徘徊。
「思うんだけど、加賀◯二泊の料金を払う位なら、デ●ズニーシーの年間パスポートでも買った方がよっぽど気が利いていると思うんだよね。」
「そっか!それだ!それいぃね!」
そうそう、肝心な事を伝えておかねば。
「料金は割り勘でね。一人61,000円だよ。大丈夫?」
「大丈夫だょ!青丹さんに振られて悲しくて、講義の合間を縫ってがむしゃらにバイトしていた頃の貯金がまだまだあるから、平気。」
という訳で年間パスポートを購入しに、講義を終えるとおのおの銀行のATMでお金を下ろして、早速舞浜へ。
善は急げだ。
舞浜に着くと、イクス◉アリ内の東京デ●ズニーリゾート・チケットセンターへと向かう。
ここで顔写真を撮影して、年間パスポートを作成するのだ。
受け取った頃にはもう夕方だったが、物は試しにと早速入園する事にした。
これで猛くんとたびたび会えると思うと、安いものだ。
年間パスポートなら混んでいる時期を避けていつでも行けるし、これは我ながら名案だったな、と思う。
で、モノレールで移動してデ●ズニーシーへ。
入園する時、年間パスポートを持っているだけで少し誇らしい気持ちになるのは何故だろう?
入ると、混み具合はそこそこ。
世間では春休みが終わり、ゴールデンウィークを控えている谷間の時期。
今の内に毎日来れば、あっという間に元が取れそう。
それはそうと、デ●ズニーランドよりもだいぶ後に出来ただけあって、シーはパーク内の景色が素晴らしい。
見ているだけでうっとり。
さて、何処にゆこう。
まずは肩慣らしにアク○トピア、かな。
これ、乗ってみると動きが面白い。
見るとレールはなさそうだから、
流石はデ●ズニー、お金が掛かっている。
その後、レイ◎ングスピリッツとタワー・オブ・テ◯ーに乗ってこの日は終了。
夕方から入ってこれだけ乗れれば、かなり上出来。
というよりも、たまたま空いていただけなのかもだけど。
そんな訳で、すっかり遅くなっての帰宅となった。
実は猛くんには家に電話してもらっていて、外泊の許可を得てもらっている。
貧乏学生の一人暮らし故に、狭い部屋なのもあって雑魚寝みたいになってしまうけれども、そこはいつもの通りに勘弁してもらおう。
「記念にピザでも取ろうか?ビール冷えてるよ!飲もうよ。」
「賛成!ぼく、冷蔵庫から缶ビール持ってくるょ!」
猛くんは酒癖が悪い。
それに乗じて襲う事も出来なくはない。
だが、そんな事を考えていると心の何処かがチクチクと痛み出す。
結局この日もいつも通りに何もないまま、夜が更けてゆくのであった。

その日の夜中、丑三つ時。
猛くんがうなされていたので、ゆり起こす。
「ねぇ猛くん、大丈夫?」
猛くんはゆっくりと体を起こすが、心なしか顔が青い。
聞くと青丹さんに最後に逢った日の事を思い出していたんだとか。
「その日、青丹さんは一度も笑ってくれなかったんだ。そんな事初めてでどうしていいか分からなくて、ぼくはただずっと笑ってた。涙が溢れてきてもお構いなしに、ずっと笑ってたんだ。翌日、メールを送ろうと思ったら届かなくて、焦って電話を掛けてみても繋がらなかった。三日三晩泣いたよ。その時の事を思い出して、辛くなっちゃってさ。ごめんね。」
正直、返す言葉がなかった。
でも、ここで何も言わなかったら、多分一生後悔する。
だから言った。
渾身の力を込めて。
「ぼくがいるよ!青丹さんが戻ってくるまでの繋ぎでもいいし、ずっとただの友達でもいい。ただ、忘れないで。決して忘れないで。猛くんは独りじゃないよ!ホントだよ。」
その瞬間、猛くんは泣き崩れた。
ぼくはその背中をさすりながら、何があってもこの子を支えようと、心に誓った。

それからのぼくたちは、前にも増して仲良くなった。
結局まだ一線は超えていないけれど、その方が上手く行くのなら、今はまだそれでいい。
デ●ズニーという共通の趣味も出来た事だし、これから度々シーを口実にして会えるかと思うと、胸がドキドキする。
これからゴールデンウィークがやって来る。
そしてその後の鬱陶しい梅雨を抜ければ、いよいよ夏だ。
今年の夏は忘れられない、二人だけの夏にしたい。
いつか猛くんと付き合う事の出来るその日まで、ぼくは頑張るんだ!

気が付くと、窓ガラス越しに空が白々と明るくなってきた。
今日は土曜日。
このまままたシーに行って、猛くんと楽しんでくるんだ。
小・中・高といじめられっ子だったぼくの青春は、まだ始まったばかり。
振り返ると色んな事があった。
きっかけは、小学校の頃にクラスの番長みたいな奴が、ぼくに向かって、こいつナヨナヨしていてデブで気持ち悪い、と因縁を付けてきた事。
番長の言う事にはクラスの誰も逆らえなかったから、ぼくはいじめの格好のターゲットとなってしまった。
黒板にぼくにまつわる卑猥な落書き、トイレの個室に入れば上からバケツで水を掛けられる、親のタバコとライターを盗んで持ってきて火の付いたタバコを腕に押し当てる、などなど、色んな事をされた。
誰にも相談出来なかったのは、着ていた服をひん剥かれて全裸の写真を何枚も撮られ、チクったら学校中の生徒にばらまくと脅されていたからだ。
毎日、辛かった。
小・中・高と番長たちと同じ学校だったから、逃げ場がなかった。
でも、今は気にしていない。
辛い思いをしているのは、ぼくだけじゃないもんね。
それに猛くんのお陰で今、幸せだから……。

春の終わり、温かな心を噛み締めながら窓越しの空を見る。
やがて猛くんも起き出して、いよいよ幸せな一日の始まりだ。
先の事は分からないけれど、今はこの日常を大事にしよう、
そう胸に誓って、ぼくたちはシーに行く支度を始めるのだった。

今回は、こ・こ・ま・で。
関連記事

最新記事

検索フォーム

QRコード

QR