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海松色の日常 - 最後の審判 前編 -平凡な日常

前口上

おれの人生、転んでばっかりだっ!
空回りの得意なおれ、肝心な時に、うまく行きやがらねぇっ!
人はおれの事を猪(猪突猛進)だとか鶏(三歩歩くと忘れる)だとか言いたい放題言いやがるが、おれだって頑張ってるんだっ!
だから、ちょっとは、うまく、ころがれぇーっ!

海松色の日常 - 最後の審判 前編 平凡な日常

昔、おれには好きな男がいた
おれはそいつを、本気で愛していた

そいつとの別れから丸五年…
当時、中途半端なデブである事にコンプレックスを持っていたおれ、海松 猛は、体重を何とか、105kgにまで増やしていた
おれは、内心では、格好良く痩せたいと思っていた
だが、マ○クロダイエットとエクササイズのDVDでダイエットを試みるも、無理である事を悟ったおれは、ならばと更に太ってみる事にした
おれの心の中には抵抗もあったが、元々中途半端には太っていたので、『どうせ痩せているのではないのだから』と、無理矢理に自分を納得させる事にした
不調により一時服用していた、向精神薬の副作用も手伝ってか、おれの体重は、緩やかに増加のカーブを描き続けた

体重が増えたお陰で、昔よりは出会いに不自由しなくなったおれだが、特定の男と付き合うまでには至らず、この五年の間はずっと独り身のままだ

『ん?もうこんな時間か…』
朝目覚めると、おれは大きく一つあくびをする
部屋の時計の針は、十時半を指していた
今日は休みで予定も特に無いのだが、このまま眠っていては、何もしない内に一日が終わってしまう
まだ眠さの取れないおれは、のそのそとベッドを抜け出すと、パソコンデスクの前の椅子に、どかっと腰を掛ける

パワーボタンを押し、少々時代に取り残された感のある、ガタのきた相棒を眠りから目覚めさせると、画面には虹のような模様が現れる
このパソコン、画面の周りだけ黒枠なのが妙に鬱陶しい
いっそ全部真っ黒にすれば良かったのに

出たばかりで買った24インチの一体型M○cだが、もうすっかり寿命だ
いっそのことすぐにもマシンごと買い替えたいのだが、生憎今の所、おれには金が無い
つい先日も、スマホを新しいiPh◎neに買い替えたばかりだし
『テレビだって、そろそろ新調しねえとな…』
最近の電化製品は、足が早すぎて困る

おれはスクリーンセーバーを解除し、無意識のうちに、薄っぺらいキーボードのファンクションキーを押す
ホットキー一つで、重なり合っていた無数のウインドウは四方に散らばり、そうしておれは、何も考えずに目的のブラウザウインドウにアクセス出来る

もう使わないからといって、ログアウトやシャットダウンをする習慣が無く、作業を終えたからといって、アプリケーションを終了させる事も特にしないおれには、なかなか便利な機能だ
仮想デスクトップのような機能もあるにはあるが、ウインドウは増えるばかりだったからだ

大して美味くもないチルドコーヒーを冷蔵庫から取り出すと、おれはただ惰性でタブブラウザのリンクを片っ端からクリックし、手当たり次第にファイルをダウンロードしていく
既にダウンロードフォルダには、動画とか画像とか、よく分からない.zipとか、いろんなものが無数に詰め込まれていた

「げ…」
おれは、夥しい数の落としたファイルが、整理もされないまま、散らかり放題なのに気付いて、肩の力が抜ける
「めんどくせえ…」

デスクトップなどの目に付きやすい場所はさすがに、あまり散らかしたくないので、おれのパソコンは、一見すると綺麗に整理されているようにも見える
だが、ズボラなおれは、普段目に付かないフォルダは、無数のファイルで散らかっていても、そのままずっと放ったらかしにしてしまう

おれには、普段の部屋の片付けの時にも、床やベッドに散らばったものを取り敢えずクローゼットや戸棚に放り込んで、安直に済ませてしまうという悪い癖がある
だからおれの部屋は、一見すると綺麗なのだが、きちんと整理が出来ていないので、どこに何があるのか分からない事もしばしばだ
昔はマメに整理していたような気もするのだが、最近はそんな気力も無い
取り敢えずは、見えるところだけ片付けばそれでいい
要するに、臭いものに蓋をするようなものだ

おれは、好物のミルクレープを頬張りながら、片手で頬杖を突いて、収拾のつかなくなったフォルダを眺めていた
『めんどくせえな』
しばらくの間どうしたものかと考えていたおれは、開き直って、結局何もしない事にする
『ま、後で検索でもかければいーか、今日びフォルダ分けとかタルくて有り得ねえし…』

そう、今時のM○cやPCなら、どこに保存したかをいちいち覚えていなくても、検索をかければ一発で探し出せる
最近のOSは軒並み検索機能が充実しているので、おれのような人間にはありがたい
だいたいおれは、いちいちマニュアルを読んだり、考え込んだりしながらパソコンを弄るのが苦手だし、嫌いなのだ
楽しければそれでいい
PCではなくわざわざM○cを使っているのも、PCの方がやや煩雑な印象を拭えなかったからだ。

『ファイルの整理なんかやりたくねぇ、ウイルスなんかに振り回されるのもごめんだっ!めんどくせえのは現実だけで十分だっ!』

そうして
そんなことをしながらおれは、男もこんな風に簡単に、検索出来たらいいのにとか、別の事を考えている

思い立って、落とした動画を適当に選んで再生してみると、大した内容ではないのだが、おれの息子は一応、いっちょまえに反応している
興奮したおれはパンツを持ち上げて、隙間から覗く自分の息子を視界に入れ、そして溜め息を吐く
『まぁ、この大きさじゃあ、どの道タチは難しいな…』

以前と比べてデブさを増したお陰で、少しは相手にされるようになったおれだが、それと引き換えに、元から小さかった息子は、いつの間にか更に肉に埋もれてしまったようにも見える
この世界ではウケの人間の方が多いので、タチに転向出来たらもう少しモテそうなものなのだが、この大きさでは如何ともしがたい

スピーカーからは悩ましい声が部屋に響き、画面上では男達が蠢いている
変わり映えのしない、いつもの光景
そんな部屋の中で、全裸に近い格好で椅子に踏ん反り返るおれは、意を決して立ち上がり、いつの間にかずり落ちてしまった、先走りの付いたトランクスを、持ち上げて穿き直す

いつものように自慰行為で済ませてしまっても別に構わないのだが、おれは人肌が恋しかった
おれは今、無性にHがしたい

掲示板で募集をかけ、取り敢えず安直に性処理を済ませる事にしたおれは、いつものサイトをブックマークで呼び出す
当たり障りの無い文面で誘いつつ、おれは返信のメールを待つ

そうして
しばらくして、おれは返信のメールをチェックするために、画面下のアイコンをクリックした
切手マークのアイコンが威勢良く飛び跳ねるが、大して気が紛れる訳でも無く、おれは少しイライラする

「チン♪」
新着メールの受信を知らせる、軽快な音
おれは早速、開いてみる
一通り目を通すと、単純なおれは浮かれていた
テカりの鬱陶しい画面に映し出されているのは、言うまでも無く、おれが出会い系に載っけた募集への、返信のメールだ
『プロフは…年齢が少し気になるけど…後はまあまあだな、おーし!』
おれは早速、返事のメールをいそいそと打ち込む

パソコン歴八年のおれだが、ただだらだらと弄るばかりで、何も覚える気が起こらず、未だにタッチタイプすら満足に出来ない
しかし、キーの場所を全く覚えていない訳でも無く、こんな時ばかりは、なかなかのスピードで打ち込める
出来る事ならば今日中に誰かと会いたい、そう考えていたおれは、打ち込んだばかりのメールを、急いで送信した

「脈有りなら、いーけどなー」
残り少なくなったコーヒーを一口啜ると、更なる返信を待つおれは、そう呟きながら、軋む椅子に深く腰掛ける
『画像交換とか持ち掛けられたら、めんどくせえな…』

おれは、画像交換が嫌いだ
写真写りが最悪なので、こちらが先に画像を送ってしまうと、相手の画像はおろか、返信さえも貰えないまま、音信不通になってしまう事も、十分に考えられるからだ
実際に会う段階にまで漕ぎ着けた相手からは、社交辞令とはいえ、これでも一応、可愛いとか言われた事も無い訳じゃないので、おれとしては極力、画像交換は避けておきたい
だいたい、わざわざ画像まで送って断られるくらいなら、何も送らずに自然消滅した方が、よっぽどマシなのだ

『まぁそもそも、今日びHの相手探しに、掲示板だなんて、流行らねえか…』
でも、SNSは取っ付きにくいし、ハッテン場は病気が怖かった
飲みに出れば素敵な相手に巡り逢えるのかも知れないが、昔初めて行ったお店で店子とケンカになって以来、飲み屋はトラウマになっていたのだ
男と別れた直後で、少しばかり荒れていたから、その時のおれの態度にも原因はあるのだが、そもそもおれ自身の性格が、飲み屋にはあまり向いていないのではないかとも思えてきて、今でも何となく避けてしまう

それでもあわよくば、どーにかして彼氏なんて出来ないものだろーかと都合のいい事を考えて、その度に、昔付き合っていた男の顔が、いーさんの優しい顔が目の前にちらついて、おれは深い溜め息を吐いていた

その日の夕方、ワンルームの一室
おれは姿見の前で服選びをする
昼間メールでやり取りしていた奴と、これから会うのだ

正直に言えば、期待している部分もある
『ま、久々だしな…』
所詮はHだけの関係だ
選り好み出来る立場にも無いし、とにかく抱かれたいので、見た目は二の次でいい
優しさなんて期待していないし、愛なんて無くていい
気持ち良ければ、それでいい
そう思うおれの意識は、既に曇っていた

火照る体、高鳴る鼓動を意識しながら、白いコットンレーヨンのシャツを羽織ったおれは、ハンガーにぶら下がったジャージ素材の黒いジャケットに袖を通し、黒い棒タイを太く短い首に掛ける

腰の辺りが疼く

いつものグレーのアンクルソックスを履き、ストレッチ素材の黒いパンツにぶっとい脚を無理矢理押し込む

昔は、あまり丈夫じゃないような気がして、ストレッチ素材のパンツは好きじゃなかった
尻がでっかいから、屈むと、尻の割れ目の部分が裂けてみたりして
でもこの頃は、少し歳を取ったせいか、ストレッチしないと窮屈に感じる

そうして、オイルドコットンの、お気に入りの黒いハットを被る段になって、ようやく、自分が黒ずくめである事に気付く
『あーあ』

汚れが目立たず、情けない自分の存在も目立たず、心なしか締まって見えるせいか、それともおれの心が何かに反応するせいか、気付けば、おれのクローゼットには黒い服ばかりが増えていた
そのせいもあってか、生まれてこのかた、おしゃれに見られた事なんて、一度もない
欲しくなるような服は、どーせとても手が届かないし、ま、別にいーか
『ま、デブだからどーせろくに似合う服もないしなっ!』

そーいえば“服飾情報誌”も、お気に入りの雑誌が廃刊になってから、すっかり手に取っていない
元々、「ファッション」とかそーいう浮ついた事柄には、まるで興味がないのだ
『デブで結構、ダサくて結構』っと!

黒いiPh◎neをポケットに無理矢理押し込み、黒いイヤホンを耳に掛け、先のぽってりとした丸い革靴を履く
鞄の類があんまり好きではないので、今日も手ぶらだ
だいたい、男のくせに、小振りで洒落た、財布とケータイくらいしか入らないようなブランド物の“バッグ”を見せびらかすだなんて、ちゃんちゃらおかしーだろおと、自分では思っている

頭が、カッタいのかもなぁ…

玄関脇の靴箱に乗る、青いオードトワレを頭上に振って、おれの戦闘準備は整った

ファーストインプレッション
『好みじゃない』
見た瞬間に感じた、偽らざる感想
流れに逆らわず、流されるままに身を任せようと思っていたのに
『嫌だよ、こんな奴』
高飛車な自分が、身の程も弁えずに心の中で呟く

挨拶に続いて、当たり障りのない会話を二言、三言交わして
しばしの沈黙が、何となく流れて
「どうですか?」
そんな風に聞かれて
改めて顔を見るまでも無くて
『冗談じゃねーでしょ』なんて心の中では呟いていて
しかも目線を逸らしたままの状態で

「あー、なんか、カッコいーですねー、あ、おれなんかでよければ、ぜひー」

なんて、心にも無い台詞が、ついうっかり口をついて出てしまって
で、結局、流されるままにホテルに流れ着いて
心の中に住み着いた不良性が、どうにも表に出せなくて

そうして
取り立てて狭くも無いが、綺麗でも無く、ましてや何の感動も無ければ面白みも無いラブホテルの一室で、おれはひとりシャワーを浴びていた

もちろん、ジャグジーでもなければ水中照明もなく、多機能シャワーもなければ浴室テレビもない
ま、男同士で入れるホテルなんて、どこもこんなもんだろう

しかし、無駄に広いのね

一応ね、とシャワーヘッドを外して、尻の肉を掻き分けて、先っぽをおもむろに突っ込む
「んー、やべぇ、調子悪いかも」
一応、普段から食べるもんには気を遣っているつもりだが、まぁ、たまにはこんな事もあるだろう
『ま、どーせ相手も面倒臭いんじゃねえのか?』
おれは何だか、投げやりになる

大体、バックとかそーいうのは、入れる方にしたって、きたねーんじゃねえのとか、性病がどーとか、そんな事が気になって、意外と無い場合も多いんじゃないのかと、おれは思う

浴室を出て、ベッドの縁に腰掛けると、大した会話も無く、おれたちは事に及ぶ
実は、会って最初に目を合わせたのを最後に、今の今まで一度も、顔も見ていない
ま、今更見て後悔しても手遅れだし
可愛い女の子じゃあるまいしな

当たり前のように押し倒されて、一方的に全身に舌が這い回る
相手の手が下着に掛かり、「小さいね」とか「(ちんちんが)可愛いね」とか言われたらこいつどーしてくれようかなどと、変な妄想が頭をよぎるものの、そこまでデリカシーの無い相手でも無かったみたいで
どーにでもしてくれなんて思っていると、「(顔が)可愛いね」などとあまり聞き慣れない台詞が耳に届く
身体ならまだしも

しかし、どうしたものだろう
思いがけず嬉しい台詞の筈なのに、素直には喜べなくて、むしろ何だか可笑しくなってしまった
でも、途中である事に気が付く

『あ、なんだ、上手いじゃん』

相手は、胸揉んだり腹の肉掴んだり、いろいろ楽しんでるみたいなんだけど
なんか、余裕無い
弱いとこばっか責められて、乳首とか、もう堪んない
「んっ、んっ、んんっ」
『あ、なんだ、おれ、声、出てる』
取り敢えず、相手のを掴んで扱いて、早く出してもらおう
おれも早く出したい

で、相手のを扱きつつ、空いた片方の手をおもむろに自分の股間に持っていって、摘んでみるけど…
「あっ」
思いがけず、手を止められてしまう
『なんだ、入れるのか?こいつ』
相手は、おれに四つん這いになるように促す
『なんだ、入れるんじゃん…』
おれは心の中で、大丈夫だろうかと不安になっていた

ちなみに、挿入された経験はそんなに無いが、普段張り型でせっせと自慰行為に勤しんでいるせいか、あまりキツくは無いと思う
タチやりてえーなどと、無謀な事を時々、考えてみたりもするのだが、そもそも自慰行為の時など、乳首を弄りながら張り型を挿入しなけりゃ、イケもしない体になってる訳で、おれは大いに困る
だいたい、ネコには賞味期限ってもんが、あるしなー…
『何とかしなけりゃだな、こりゃ』

で、肝心の汚れの方は、何とか大丈夫みたいだったので、おれは心底ホッとする
「んっ、んんっ、んーんー、ああっ!」
安心したせいなのか、相手が元々上手いのか、次第に声が止められなくなる
ズンズンと、相手の動きが腰中に強く重く響く
ぬちゃぬちゃと、イヤらしい音が部屋中に響く
後ろから両手が伸びてきて胸まで刺激されて、遂には耳まで舐められて、おれはたまらなくなる

『尻が、あっつい』

後はもう、為すがまま
すっかり征服され、全身を弄ばれて、おれは獣に成り下がる
我ながら、やべぇな…

「んあっ、んあぁっ、あーあー、んーっ、んっ、ああんっ、あああ…あーっ、あーっ!」
先走りも涎も垂れ流し、恥ずかしげも無く腰を振って、鳴き声を上げ続けるおれ
結局、トコロテンとまでは行かなかったものの、相手が出したすぐ後に、自分の手で三擦り半で噴き出した

終わった後、おれの体は汗だくだった
ベッドに突っ伏して、肩で息をする
さっきまでの乱れっぷりが嘘のように、後悔が波のように押し寄せる
しかし、相手にとってはおれは、最早用の済んだ存在であり、十代相手じゃあるまいし、優しい言葉を掛けてくれる訳でももちろん無い

こうして、おれたちはムードの欠片も無いままに、シャワーさえも浴びずにそそくさと着替えて退室し、駅まで一緒に向かって歩く
眠い、腰が痛い、なんか、ダルい…

再び駅に到着し、そのまま無言のまま切符売り場の前まで進み、取り敢えず社交辞令丸出しの挨拶をしておくために、相手に顔を向ける

「うわぁ」
さっきまで散々喘いで腰振って喜んでたくせに、相手の顔をまじまじと見た途端に、泣きそうに後悔している、我が儘なおれ
Hひとつでガタガタ騒ぐなんて…
なんだ、意外と乙女じゃん、おれ
こんな時に限って、叩き潰したはずの心が情けなく疼く
まだ駄目かっ、もっと踏み潰せっ!

部屋に帰って、ベッドの上で、おれは一人うずくまっていた
頭が、ガンガンする
『またやっちまった…おれの猪』

さっきまでの出来事を頭から消し去るために、おれは酒を呷る
おれは発泡酒は飲まない
大して値段が変わらないくせに味が全然違うので、あまり好きでは無いのだ
黒ビールを喉に流し込んで、笑い上戸のおれの気分は、次第に良くなる…筈だった

だが…
こんな時、つい、思い出しちまう
心の何処かが、ズキズキと痛む
おれは、今だに心の中に巣くうあの人の記憶をすぐにも消し去りたくて、ひたすらに酒を呷る
急に視界が歪む
『情けねぇ…』

そうして
部屋のステレオのスイッチを入れ、大音響でエレクトロのCDをかけたおれは
あの日の出来事を思い出して、一人泣いていた

ひとしきり泣いて落ち着いた後、残り少なくなった酒に手を伸ばしたおれは、視界の端に光るものを発見する
それはメールを受信したばかりのiPh◎neのディスプレイだった。
差出人欄には、まるで見覚えの無いアドレス

だが、本文の内容に目を通し始めると、おれの体には電撃が走る
信じられなかった
携帯を持つ手の震えが、止まらない
『青丹さん…』

顔を拭ったおれは、あの人からの五年ぶりのメールを、ただ黙って、じっと見つめていた
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