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海松色の日常 外伝 - The Seasons : Summer [照り付ける太陽に惹かれて]

只今、自室のベッドにて、塞ぎ込み中。
就活が上手くいかない。
全くと言っていい程、手応えがない。
ぼくは幼い頃に実の両親を車の事故で亡くして以来ずっと、子供が欲しかったのに出来なかった親戚の家で我が子のように可愛がってもらっていた。
本当ならこれ以上迷惑は掛けられないのだが、これはひょっとすると義父のコネに頼る他ないのか、といった所まで事態は切迫していた。
二流の大学に通っていると、こういう時に苦労するのだ。
「はぁ〜、どぅしょぅ。」
そういえば最近は春希くんともあまり遊んでいない。
彼も就活で忙しいのだろうな。
大学に行けば顔を合わせることもあるから、音信不通ではないのだけれど、やはりちょっと寂しい。
と、そこへ携帯の着信音が鳴り響く。
「春希くんからだ!」
メールの中身を開くと、実に春希くんらしい文章が詰まっていて、思わず頰が綻んだ。
「猛くーん、元気かな?
ぼくはチョイ凹み気味。
就活めんどくさーい!
てかちょっとやばい。
このまま行くとフリーターかも!?
という訳なので良かったら今週末辺り、気晴らしに海にでも行かない?
江ノ島辺りどうかな?水族館もあるし。
へんしーん、待ってるよん(^_^)」
ぼくは嬉しかった。
何を隠そう、ぼくは動物園よりもサファリパークよりも、水族館が大好きなのだ。
早速返信をする。
「OK(^_^)v ペンギン、イルカ、アザラシ!
水族館楽しみ〜。
待ち合わせの時間とか、決まったら教えてね(^_^)」
すると即返信が。
「海で泳ぐから、水着はビキニでね!ぼくもビキニ穿いてくよ(^_^)」
えー、嫌なんだけど。
恥ずかしい。
でもこれでビキニ穿いて行かなかったら、春希くん怒るんだろーな。
えぇぃっ!仕方なぃっ!
ビキニ、穿いて行くしか。
というか、そもそもビキニなんて持っていないから、近くのデパートまで買いに行かなきゃならないんだよな。
明日行ってくるか。
めんどくさいなぁ、やれやれ。
で、その旨春希くんに伝えると……。
「白いのじゃなきゃ嫌だよ。ぼくは黒だけどね。明日行くんなら、ぼくも買い物付き合うよ。大学以外で会うの久し振りだし(^_^)」
うげぇ、白ビキニ決定か、この緩み切った腹で。
自殺ものだろ。
うん、嫌だ。
明日は何とか春希くんを丸め込もう。
で、当日。待ち合わせは昼過ぎ。
遅めの昼食を先に一緒に食べてからぼくの水着選びをするという算段。
食事に入ったのはデパートまで程近い生パスタのお店。
美味いとの専らの評判で、見ると今日も行列ができている。
ここのカルボナーラは有名らしく、初めての二人にしてみたらそこは押さえておきたい所。
しかし炎天下の30分待ち。
無言の二人。
というか、会話する気力も失せます。
で、ようやくお店に入って。
もちろん頼むのはお目当てのカルボナーラ。
お揃いでアイスアップルティーも付けて。
席に座ってしばらく待っていると出て来た。
ふむ、味はピカイチ。
だがこの後、どういう訳だかぼくにだけ困った事態が訪れる事になる。
それは、一通り食べ終えて店を出てから起こった。
きゅるるる〜。
そう、お腹を下したのである。
デパートのトイレに慌てて駆け込んでから30分。
ようやっと正常に戻った。
一つ言える事。
それは、あのお店にはもう二度と行かない、という事でしょう。
個室を出てしっかりと手を洗い、春希くんの元へ。
「ごめんね、春希くん。待たせちゃって〜。」
ぼくがへこへこと頭を下げると春希くん、意地悪な笑みを浮かべながらこう言い放った。
「いいよ、大丈夫。その代わりにこれで白ビキニ確定ね。エグいやつがいいなぁ、へへ。」
カルボナーラの馬鹿……。
デパート帰りの紙袋の中には、春希くんの希望通りのエグい白ビキニが。
近くの家電量販店でトリマーも買いました。
えぇ、買いましたとも!
痛い出費だけれども、これがないと見るも無残なはみ毛の嵐だろうから、まぁ仕方ない。
無駄毛はきちんとお手入れしないとネ!
で、やって来ました週末。
いざ、江ノ島へ!
「今度はいつかみたいに、斜め横断のおじいさん、いないといいね。」
「全くだよ。あの時猛くんがいなかったらぼく、交通刑務所行きだったかも。」
EL&Pがジャンジャン鳴り響く車内で、とりとめもない会話をするぼくら。
と、ここで春希くんが楽曲チェンジのリクエスト。
「ぼくね、実はクラシックとか聴くんだ。朝比奈隆のブルックナーだとか、結構良いよ。聴いてみる?」
おいおい、幾ら何でも渋すぎないか?
ここはストレートに却下あるのみ。
「朝比奈隆とぼくの白ビキニ、どっちがいい?」
「朝比奈隆は聞かなかった事にしてください……。」
よしよし、そう来なくっちゃ。
そもそもぼく、クラシックは一切聴かない。
かつて青丹さんに勧められた事があって、懲りているのだ。
みんな大体通好みのセレクトを勧めてくるよね。
あれ、何なんだろう?
グラズノフの交響曲だとかステーンハンマルの交響曲だとか、クラシック初心者のぼくに勧める意味が分からない。
難しい曲ではないらしいけれども、それならせめて英雄とか運命とか田園とか第九とか、さ。
もうちょっとマシなセレクトがありそうなものだ。
と、そんな事を考えながらEL&Pを聴く。
盛り上がって参りました。
で、到着。
駐車場に車を停めて海岸へ。
もうね、人、人、人。
渋谷のスクランブル交差点じゃないんだからさ、ちょっとは加減して欲しいよ。
で、二人してビキニ姿に早変わりすると、日焼け止めを全身に塗りたくって、ビーチパラソルの下でしばし休憩。
海の家で行列に並んで買ったカキ氷が美味しい。
行列にも慣れてきたかも。
「あ、サングラス忘れたね!」
「ぼく、西部警察みたいな奴が良かったなぁ。」
「ぼくはグ○チかプ◯ダ(別にどちらでも良い)」
もう言いたい放題な。
「そういえばグ○チってうちわ売ってた事があったらしいょ。誰が買ったのかな?」
「ここにはいないでしょ、猛くん。」
和やかなひと時。
しかし暑い。
「ねぇ、ひと泳ぎしない?」
「いいねぇ、ちょうど身体が火照ってきた所だし。」
こうしてぼくらデブ二人は海水浴を楽しむ事にした。
「しっかしこれじゃあ、芋煮だよねー。」
ぼくが春希くんに話し掛けるも、反応はない。
気になって振り向くと、何だかもじもじしている。
トイレかな、と思っていると春希くん、とんでもない事を耳打ちしてきた。
「さっきから猛くんの裸を見ていて興奮してきちゃってさ、ここでしない?」
何を言うかと思えば!!
青丹さんを待たないと後悔するって言っていたのは自分の癖に!!
「嫌だよこんな所で!ぼくはいつかの春希くんの忠告通り、青丹さんを待つ事にするよ。」
「そんなぁ……。」
あんまりしょげていて可哀想だったので、どさくさに紛れてディープキス。
春希くん、どうやらショートしちゃったみたいだ。
ウブだなぁ。

で、お昼。海の家で焼きそば。
「ねぇ春希くん、普段焼きそばなんてろくに食べもしないのに、海の家で食べると美味しいね。錯覚?」
「焼きそばってこのロケーションがないと美味しくないんだょね。冷やし焼きそばってないのかな?」
「それよりぼくは目玉焼きをWで乗っけて欲しかったかも。」
「それ、いぃね!スタミナ付きそう!」
食後の〆はやっぱりカキ氷。
あっという間に完食。
「ね、海はこれ位にして水族館行かない?」
今回、何よりこれを楽しみにしていたのだ。
行かない訳にはいかない。
実はぼくは何を隠そうアザラシフェチなのだ。
あの間抜け面がどうにもたまらない。
星野道夫、最高!
水族館に着くと順路も無視してアザラシエリアに直行。
それから多分、二時間くらいはいたんだと思う。
春希くん、もうすっかり眠そうだ。
「帰ろっか。」
「うん。」
「ぼく、今でも春希くんとなら寝てもいいと思ってるよ。海の中は嫌だけどね。」
見ると春希くん、顔が真っ赤だ。
実に分かりやすい子。
「帰りの運転、事故らないように、よろしく!」
ぼくは春希くんの肩をたたく。
すると、「また就活だね!お互いフリーターにはならないように、頑張ろうね!」
春希くんのこの一言で、一気に現実モードに引き戻されたぼく。
ホント、どうしよ。
義父に土下座でもするか。
見る間にストレスフル、頭痛のタネでいっぱいに。
あぁ、時間がない〜!

ちゃんちゃん。
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