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ペン助・ペン太のほっこり劇場 [其の三]

雑踏を歩く。
空は傾いて、夜の足音がひたひたと迫る。
餌を買った。
ペン助とペン太が待っている。
重いけれども、急いで帰ろう。

ふと、振り向くと。
見慣れた影が二つ。
ペン助とペン太だ。
「ペン助!ペン太!何でこんな所に!」
駆け寄ると、珍しく抱き付いてくる。
「刃物を持った男が家の中に入って来たんだ。無理矢理さらわれて、逃げるのに苦労したょ。」
「何せいきなり気絶させられて、胴体を縄でグルグル巻きだからな。車でさらわれたから、念で上手く事故らせて逃げて来た。可哀想だけど、ありゃもう駄目だな。事切れた。あの時は、あれが精一杯だった。どうにもならん。」
目の前が真っ白になった。
何を言っているのか、上手く飲み込めない。
それでも、目の前の二羽の心配はしないといけなかった。
「ペン助、ペン太。怪我はない?大丈夫?」
「僕達はどうにか平気。ただ、家の鍵、開けっ放しだょ。」
一大事だ。
「ペン助、ペン太!急げ!」
家に駆け戻る。
この日、夏太郎は実家に帰っていて、家には誰も居ない。
実に間が悪いのだ。
五分後。
到着。
玄関前には見慣れない軽トラ。
家の荷物を無断で運び出そうとしていた。
程なくして発車。
が。
すぐさま電柱に激突。
どうやらペン助とペン太が念じてくれたらしい。
僕は慌てて警察を呼んだ。

警察で。
僕は形式ばかりの取り調べを受けた。
通り一遍の事情を聞かれて、卒のない答えを返して。
最後に、僕は聞いた。
「犯人達の怪我の具合は、どうなんですか?」
刑事さんは笑って答えた。
「軽傷だよ。ただ、軽トラは廃車だな。馬鹿な奴らだ。近所に夫婦で住んでいたんだが、もう居られないだろう。」
そう。
犯人は、夫婦だった。
たまたま我が家の玄関の扉が開けっ放しだったのを見ての犯行。
咄嗟に思い付いたらしい。

家に帰って。
荷物が無事で良かった。
「僕達が無事で、良くない訳!?」
ペン助、怒り心頭。
ペン太もぷんすか怒っている。
いや、さっきも心配したじゃんか。
もう、世話の焼ける。
僕はしゃがむと、二羽の頭を撫でてやった。
すると。
「餌ー!」
「飯ー!」
今度は餌ですか。
はいはい。
餌は山程買って来たのだが、大して持たない。
何しろこの二羽、大飯食らいなのだ。
念を使える代わりに、燃費が頗る悪い。
普通のマゼランペンギンよりも、余程多く食べる。
「ほら、お疲れさま。」
今日も大量の餌を与えるのだがーー。
「足りなーい!もっと出せー!」
「早く餌持って来ないと呪い殺すぞー!」
いや、それ洒落になってないから。
仕方ないから、お代わりを運ぶ。
バケツで。
普通の家でこんなの、飼える訳がない。
沢山の遺産を残してくれた、両親に心から感謝。
「あいょー!持って来たょー!」
「やったね!流石は雪太!」
「雪太様、愛してるー!」
こんな時だけ、チヤホヤ。
ちなみに、こういった前向きなコメントが出ると、お代わりは打ち止めだ。
何とか足りたようで、良かった。
でも、明日も買い出しに行かねば。
毎度の事だが、面倒である。
「今、面倒臭いとか思ったでしょ!」
「いやいや、全然。」
「まぁいい。餌が多かったから許す。」
おいおい。
これでは、おちおち考え事も出来やしない。
勘弁してくれ。
もう疲れた。
掃除は明日。
おやすみなさい。

翌朝。
夏太郎が帰宅した。
「うぃっす!」
「雪太ー!馬鹿太郎が帰って来たよー!」
「阿保太郎様のご帰宅だぞー!それにしても、相変わらずの間抜け面だな。」
「五月蝿いぞ!居候の癖に!」
「下等生物が何か言ってる!雪太ー!機関銃持って来てー!」
「バズーカ砲持って来ーい!この家もろとも、夏太郎を吹っ飛ばす!」
「五月蝿ーい!!夏太郎も、余計な事言うなー!!」
やれやれ。
叫び過ぎで、声が枯れそうだ。

「そっか。大変だったな。」
事のあらましを説明しての、この反応。
素っ気なさ過ぎやしませんか?
まぁ、良いけど。

そもそも、ペン助とペン太の居た、今は無き水族館に初めて訪れたのは、三年前の事。
新しくペンギンを展示するというので、行ってみたのだ。
今年で二十歳になった僕が、今は亡き両親との最後の思い出を作った場所。
それが、ペン助とペン太の居た、あの水族館なのだ。
それから一年を待たずに両親は他界。
以来、どういう訳だか惹かれて、毎日のように水族館に通うようになった。
その当時から、水族館はお客さんもまばら。
目玉のペンギンの展示も、効果がなかった。
毎日通う内に館長とは知り合いになって、ペン助とペン太にまつわる話も教えてもらえた。
館長は、知っていた。
ペン助とペン太が喋れる事も、念を使える事も。
だが、能力をフルに発揮させるには、大量の餌が要る。
そんなものは用意出来ないと、館長は力なく零していた。
それに、全てを明らかにすれば、ペン助とペン太は狙われる。
それも、いろんな筋から。
ペン助とペン太には、静かに暮らして欲しいと、館長は願っていた。
そうなのだ。
だから、昨日のような事態は、起こってはいけないのだ。
「引っ越そうかーー。」
そんな無謀な考えが、頭をよぎる。
だが。
『僕はここが良い!プール広いし。引っ越すって、何処へさ。止めな。』
『俺も引っ越しには反対だ。金は大事にしろ。何せまだまだ厄介になるつもりだからな。自分達の身を自分達で守る、それ位の力はある。安心しろ。』
ペン助とペン太が、少し離れた中庭から念で訴えかける。
なるほど。
どうやら僕は、ペン助とペン太を少し見くびっていたかも知れないーー。

引っ越しはしない事となったが、物騒なので機械警備を入れる事にした。
いわゆる、ホームセキュリティだ。
それにつけても、金である。
世の中、安心も安全も、金で買えるのである。
が、しかし。
設置工事も終了して、安心を得られたと思ったのも束の間。
またも僕達を脅威が襲う。
玄関で、ドンっという大きな爆発音が聞こえる。
続いて、玄関扉に開いた大穴から二人組が侵入。
中庭のペン助とペン太を拉致しようとした。
僕は叫んだ。
「ペン助ー!ペン太ー!」
その時である。
二人組が、胸の痛みを訴え出したのだ。
それも、激しく、である。
この件で、僕はまたもや警察に通報する事となった。
後で聞いた事だがこの二人組、先にペン助とペン太を拉致しようとして事故で事切れた容疑者の仲間だった。
ペン助によると、水族館で僕がペン助やペン太と会話をしているのを目撃して、犯行を企てたようだ。
が、そんな話は当然、警察には通らない。
胸の痛みは発作によるものだったが、病院に収容された翌日には回復。
やがて逮捕となった。
胸の痛みは強烈だったようなので。
祟りが起きるとでも思ってもらえれば、しめたもの。
多分、もう来まい。

事件後のある日。
ペン助とペン太は、僕にこう切り出した。
「旅に出る事にした。ここに居ると雪太達に迷惑を掛けてしまうから。」
だから、僕は言った。
涙を、必死に堪えながら。
「頼むから、そんな事を言わないでくれ。傍に居てくれ。面倒なら見るから、な!」
「雪太ー!」
みんな、泣いていた。
ペンギンも泣くんだ、そう思った。
多分、こいつらが特殊なだけだが。

玄関はすぐに修繕してもらった。
幸いな事に爆発の規模が小さかった為に、躯体へのダメージはなかった。
工事はあっという間に終わり、生活は元通りになった。
なに、こんなもの、金を積めばすぐなのである。
さて。
車を買った。
免許は二人共に持っている。
ガレージは誂えてあったのだが、専ら来客用。
今は亡き両親は、かつてはタクシーやハイヤーを呼んでいたのだ。
さて、ここは地方都市なので、東京などとは違って駐車場事情には恵まれている。
買ったのは、廉価なワンボックスカー。
人目を憚らずにペン助やペン太と移動する為に、わざわざ用意したのである。
で、最初に企てたのが。
日帰り旅行なのである。
ペンギン連れで泊まりとなるとハードルが高い。
だから当然、日帰りなのだ。
目的地は、海。
言うまでもない。
季節外れなので、空いているだろう。
ペンギンにはもってこいだ。
さぁ、出発!
「狭いな。牢獄のようだぞ。」
「安物買いの銭失いっていう。典型的な。」
「ペン助、ペン太!聞こえてるよ!」
床にはビニールシートを敷いてある。
フン垂れ流しの邪悪なペンギン達には、打って付けだ。
「餌はあるんだろうな、当然。」
「なかったら許さない!ぶちのめす!」
「あるからー!」
ちなみに今日の運転は、夏太郎の担当。
僕より少し、上手いのだ。
ちょっと長めのトンネル。
抜けるとそこには、海があった。
それはもう、綺麗なのだ。
左手には、海岸が見える。
サーファー達が何人かいる。
今日の目的地はここなのだ。
「喋るなよ。ペン助、ペン太。」
「ラジャー!アンポンタン!」
「了解したから、餌はたっぷりな。トンチンカン!」
「OK。」
車を停め、海岸へ。
風が冷たい。
こんな時でも、ペンギンは元気なんだよなぁ。
海で水遊び。
そんなペンギン達を砂浜で見守る、僕と夏太郎。
日焼けには向かない季節だ。
うぅ、ペンギンばかりいい気なものだ。

そこへ。
サーファー達がやって来た。
ペン助とペン太を面白がっているのだ。
面倒な事にならないように、即座に僕たちも向かう。
「おー。ペンギンだぜ。これ、お前達の?」
話し掛けてくるので、大きく頷く。
「なぁ、くれよ。俺達に。」
「餌代も物凄いですし、家にプールも要りますから、飼えませんよ。」
「いいからさぁ、くれっつってんだよ。おい!」
唇を噛み締めて、込み上げる怒りを堪える。
すると。
「あいたたたたた!てめぇ何すんだ!あいたたた!」
サーファー達は砂浜の上で身悶えしている。
お腹が痛いようだ。
他に人は居ない。
「逃げるか。」
「うん!」
二人と二羽、そそくさと退散。
サーファー達がその後どうなったのかは、誰も知らない。

帰りの車中で。
「柄の悪い人も居るねー。困ったもんだね。」
「ほんとだよな。面倒な事に巻き込まれないで済んで、良かったぞ。」
僕と夏太郎、しみじみと。
そこへ。
「俺たちの手柄だな。餌を出せ、早くー!」
「今すぐ餌を出さないと、念でなぶり殺すょ!」
ペンギン達の大合唱だ。
仕方ないので近くの路肩に車を停めて、クーラーボックスの中の餌を出す。
ーー無心で食うのな。
で、予想通りに。
「お代わり出せー!」
「早く!早く!急げ!急げ!」
急き立てられるように、二つ目のクーラーボックスから餌を取り出すのだった。

食べ終えて。
「出先だからこれで我慢してやる。帰ったらまた餌な。」
「餌、無かったら許さないよ!放火するから!」
こいつらは一体、どれだけ食べるつもりだろう。
頭が痛い。
「はーい、食いしん坊の馬鹿共、帰るょ!」
「下等生物の癖に俺達を馬鹿呼ばわりか!呪うぞ!トンチンカン!」
「ちょっとばかし餌を遣ったからって、調子に乗るなよ!アンポンタン!」
怒れ怒れ。
少しは己の食欲を顧みる事だ。
まぁ結局は餌を遣る事になるのだろうが。
ちなみに、もう家には餌はないので、車でついでにお店に寄る事にした。
「たっぷりなー!ケチったらタダじゃおかない!」
「雪太様ー!沢山お願いしますー!」
「食べ過ぎだからー!」

帰宅。
中庭で餌を遣る僕。
「流石は雪太。分かってるなー!」
「雪太様、最高!」
例によって、チヤホヤ。
「はーい、おしまーい!」
餌遣り終了。
呆気なく退散するペンギン達。
と、そこへ。
電話だ。
夏太郎が取る。
相手は、麗子さんだった。
銀座丸福堂の最中が有るので、おすそ分けだそうだ。
ピンポーン♪
「はーい!」
「あらー、雪太ちゃんこんばんは。はい、最中。夏太郎に言われて、旦那も連れて来たんだけど。お夕食とか、頂ける?」
「いいですよー!今日は豚汁としゃぶしゃぶですよ。沢山ありますから、是非!」
「よぉ、雪太君。押しかけて済まないな。私は初めて来るんだが、これは実に良い家だ。喋るペンギンさえ居なければ、更に良いんだが。」
「ちょっとあなた!癌を治して貰っておいて、その言い方はないわよ!」
「その話、本当かね。」
あからさまに訝しむ、麗子さんの旦那さん。
「まぁー!失礼ね!死ねばよかったのよ!」
中庭では、ペンギン達が大喜びだ。
「麗子さん、最高ー!」
「麗子さん、愛してるー!」
「ほら、喋ってるじゃない。こんなペンギン、他に居ないわよ。」
「そうか。しかしな。人の家の床にフンを垂れ流しとはなぁ。いい加減にして欲しいものだ。」
ここで遂に、怒ったペンギン達の念が発動。
「痛!痛!」
のたうち回る旦那さん。
「私が代わりに謝るから、止めてあげて。お願い!」
すると旦那さんの痛みは、ピタッと止んだ。
「どうだ!少しは感謝しろ!それともまだ痛め付けられたいか?」
「分かった!有難う!分かったから、もう勘弁してくれ!」
ここは、ペンギン達の勝利だった。
すごすごと、その場を退散する旦那さん。
内心では僕も、ほくそ笑んでいた。

で。
夕食である。
気難しい旦那さんも一緒なのである。
「豚汁は要らん。手垢が付いているかも分からんし、何が入っているかも分からんからな。」
またもや喧嘩腰である。
やれやれ。
付き合わされる方は、堪らない。
ここは、夏太郎が一喝。
「帰れ!」
渋々豚汁を食べ始めた旦那さん。
それはもう、不味そうに。
と、ここで。
何やら中庭が騒がしい。
「どうしたの。ペン助、ペン太。」
「誰も気付いてないみたいだけど、あのジジイ糖尿病だょ。これから合併症がわらわら。大変だね。ざまあみろ。」
「そう言わずに、治してくれない?」
「嫌だ!」
「無理!」
「餌は毎日、たっぷりあげるからさ。」
「しょうがないなぁ。」
お腹には素直な、ペンギン達である。
さて、まずは糖尿病である事を、当の旦那さんに示す必要がある。
簡易な検査紙のストックがあるので、それを使う。
「お食事中すみません。ペンギン達によると、夏太郎のお父さん、糖尿病らしいです。確かめたいので、この検査紙を使ってみてくれませんか。」
旦那さん、固まる。
「、、、、、、本当か。」
やっと出て来た一言は、それだけだった。
無言で検査紙を渡すと、トイレに案内する。
結果は、聞くまでもなかった。
断末魔の叫びが、辺りに轟いたからである。

結局、ペンギン達に糖尿病を治してもらった旦那さん。
検査紙も、反応しなくなった。
これでもう、頭が上がらない。
「すまん!それと、有難う!」
ペンギン達と旦那さんは、これにてひとまず休戦。
「やっと分かったか、ジジイめ。あんなの、オタンコナスだ!」
「物分かりの悪い奴だったな。認知症かも知れんぞ。」
おいおい。
これ以上物騒な事は、言わないで欲しい。
とはいえ、ペンギン達の力で、またも幸せが舞い降りた。
これからも僕達は、共に生きて行く。
ペンギン達は、僕達に幸せを運んでくれる使者かも知れないーー。
そう思うのだった。
僕を選んでくれて、有難うーー。
心からの思い、口にしなくても伝わっていた。
僕達の幸せな日常は、まだまだ続いて行く。

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ペン助・ペン太のほっこり劇場 [其の二]

午後。
南西向きの寝室で。
控えめに入る西日が、眩しい。
それにしても、どこか気怠い。
やる気が起きない。
ベッドの上に転がる。
布団にくるまって。
死んだように。
もう、寝ようか。
季節は晩秋。
そろそろ、肌寒い。

今日、夏太郎と。
付き合い始めてから、初めての喧嘩をした。
酷いのだ。
僕の事をブスだと言うのだ。
そんなにブスなら、付き合わなければ良いではないか。
そう思う。
勝手に、出て行けば良いのだ。
悔しくて、悲しくて、嗚咽を漏らす。

と、そこへ。
夏太郎、登場。
「あぁ、ここだったか。あのな。本当にブスだと思っていたら、とっくに居ない訳だぞ。可愛いから傍に居るんだ。さっきのは冗談だ。あまり真に受けないでくれ。」
嬉しかった。
素直に、そう思った。
だから、布団から這い出ると、抱き付いた。
手放したくない、そう思った。

その後。
「中庭の掃除は俺がやるから、雪太は夕食の支度をしてくれ。」
「あいあいさー。」
もうすっかり、いつもの遣り取り。
夏太郎は、食事が作れない。
単純に、教えてくれる人が居なかったのだ。
何しろ、夏太郎の母・麗子さんは元女優。
料理なんかやらない訳である。
旦那さんも料理は作れないし、午前様が多い。
自然と毎日の献立は、デリバリーだとか冷凍食品だとか、そういうものになるのだ。
後は、焼肉だとかしゃぶしゃぶだとか、すき焼きだとか、外食だとか。
焼肉なんて、ただ肉を焼くだけだもんね。
しょっちゅうだったらしい。
面倒臭がりで食いしん坊な麗子さんらしいエピソードだ。

実は、今日の献立は焼肉なのだ。
や、手抜きだな。
そう思った諸君。
そうなのだ。
その通りなのだ。
鋭い。
実は昨日、掃除の際に腰を痛めてしまったのだ。
あまり動きたくないのである。
『たまには楽をしなくちゃね』
そう思う僕なのであった。

淡々と焼肉の支度をする僕。
中庭からは賑やかな声が聞こえる。
「おぃブス太郎!もっとしっかり掃除しろ!雪太に負けてるぞ!この分だと、断頭台が必要だな。」
「ブス太郎!掃除もロクに出来ないんなら、死んじゃえー!雪太ー!ギロチン用意してー!」
「五月蝿いなぁ!黙って見てろ!何もやらない癖に、口だけは達者なペンギンだな。念が使えるなら、それで掃除すれば良いじゃないか。」
「僕達の念は、掃除なんていう下らない行為に使って良いものではないのだ。」
「俺達みたいな高等生物に掃除とか、笑わせる。お前達下等生物がやればいい事だ。」
「ペンギンの癖に言いたい事言いやがって、畜生。」
とまぁ、中庭の掃除は重労働なので、交代制なのだ。
昨日は僕がやったので、今日は夏太郎の番。
冗談とは言え、人の事をブス呼ばわりした罰だ。
せいぜい苦しむが良いさ。
そうだ、餌でも持って行こう。

「はーい!ペン助、ペン太。餌だよー!」
「おい、餌だぞペン助!」
「わー!神様仏様、雪太様ー!」
一斉に駆け寄るペンギン達。
これだから餌遣りは堪らない。
ペン助とペン太は言うまでもなく、夏太郎よりも僕に懐いている。
という訳なので、今日は大奮発増量キャンペーンだ。
「あー!ズルいぞ雪太!それは俺の楽しみだったのにー!」
「どうせ僕はブスだからね。ズルいんだょ。」
「ちぇっ。冗談なのにさ。明日は俺が餌遣りな。」
「嫌だね。明日は元々、僕の番だ。」
「うがぁー!」
夏太郎、珍しくキレるのであった。
夢中なのはペンギン達。
「なぁペン助。今日は量が多いな。」
「大奮発だね!いつもこうなら良いのに。」
よしよし。
懐け懐け。
「雪太様、明日もよろしくお願いしますょ。」
「増量、明日も頼むぞ。餌係は雪太で決まりだな。」
「あいょ。」
「何があいょだ!掃除終わった!手洗って焼肉!」
ぷんすか怒る夏太郎。
怒れ怒れ。
ブスの恨みは怖いのだ。

「頂きまーす!」
今日用意したお肉は、カルビ、ハラミ、ロース、ホルモン。
締めて一キロ。
カルビクッパも用意した。
「うんまいね。カルビクッパ、最高だな。」
夏太郎、ご機嫌になる。
「ところでさ、雪太。」
「なぁに、夏太郎。」
「ウチの父親が末期癌らしい。ペンギン達の力で、助からないかな。」
暫し絶句。
で。
「無理だと思うけど、、、、、、聞いてみる。」
中庭に向かう僕。
夏太郎も付いてきた。
「シケた面して、どうしたょ。雪太、夏太郎。」
「面倒事なら、真っ平御免だょ。」
その面倒事を頼まねばならない。
聞いてくれるか。
一か八か、勝負だ!
「実は、夏太郎の父親が末期癌でさ……。」
「無理。」
ペン助、即答。
言い終わる前にだ。
何となく予想はしていたが、やっぱり無理か。
「なぁ、頼むよ。」
「治せって言うんだろ。疲れるからパス。」
何と!
そんな理由か。
ここは押すしか!
「頼む、この通りだ!」
二人してペンギンに土下座。
すると。
「仕方ないなぁ。やってみるよ。結果の保証はしないけどね。」
「まぁ夏太郎はともかく、雪太の願いなら止むを得んか。連れて行け。」
「さ、おいで!ありがとう、ペン助、ペン太!」
「本当に、ありがとうな。」
「礼はいいから、餌はたっぷりな。」
「雪太、餌の増量、よろしく頼むょ!」
「うん!」

という訳で、夏太郎の実家に歩いて向かう僕達。
途中、近所に住むおばさん達とすれ違う。
「あら、こんにちは〜。ペンちゃん、いつ見ても可愛いわね〜!夏太郎ちゃん、麗子さんによろしくね!」
「雪太ちゃんとこのペンギンね。可愛いわ〜!ウチで飼えないかしらね。」
「止めた方が良いですよ。大変なんで、色々と。」
「あら〜、残念。またね〜。」
おばさん達は、気の良い人たちである。
が、こんなものを飼いたいだなんて、酔狂なものだ。
もちろん、実態を知ったら嫌がるに決まっているのだが。
僕達の場合は特別なのだ。
色々な意味で。
で。
到着。
インターホンを押す夏太郎。
「あら、夏太郎。雪太ちゃんも。ーーまぁ!これが噂のペンギンちゃんね!」
「こんにちは、綺麗なおばさん。僕、ペン助。」
「俺はペン太。旦那さんの末期癌を治しに来た。旦那さんに会わせてくれ。」
「ペ、ペンギンが、喋った!」
腰を抜かす麗子さん。
夏太郎は、イライラしている。
「いいから母さん、早く会わせて!時間ないんだろ!」
「分かったわ。父さん、一階で寝てるわ。こっち。」
僕達は一階の廊下の突き当たりまで進むと、麗子さんに続いて部屋の中へと入る。
夏太郎の父親は、ベッドで眠っていた。
「よぅペン助、流石は作り話。都合良く眠っているのな。」
「これならトイレにも困らないね。床、絨毯敷きだけど、まいっか。」
威風堂々とフンを垂れ流すペン助。
「駄目よー!あーあー!」
麗子さん、半狂乱だ。
まぁ可哀想だけれど、ここは我慢してもらおう。
「ペンギンはトイレは覚えないんで、垂れ流しです。」
今更だが、一応。
やがて、ペンギン達は無言になる。
念を送っているのだ。
「どれ位掛かるのかしら?床、お掃除したいんだけど。」
「黙って!」
空気の読めない麗子さんに、ペン助の一喝。
それから小一時間、止まったような時が流れた。
そしてーー。

ーー夏太郎の父親が、目を覚ました。
「父さん!」
「あなた!」
「おぉ、お前達!雪太君も一緒か。それより、何だこのペンギンは。床、フンだらけだぞ!張り替えろ!」
凄い剣幕。
これに怒ったのが、ペン太だ。
「何だこの恩知らずは。俺達がどれだけ苦労してお前の癌を治したか、分かっているのか?」
「何だ、俺は頭までおかしくなったか!ペンギンが喋っているように見えたぞ!もう駄目だぁー!」
半狂乱の夏太郎の父親。
横で、ペン太はざまあみろといった風情である。
「あなた落ち着いて!このペンギン、喋るのよ!それよりお身体、変わりない?」
「そういえば、すっかり軽くなった。明日、病院に連れて行け。床は張り替えろよ。」
「まだ言ってるよ、この人。死ねば良かったのに。」
ペン助が、ボソリ。
これにギロリと睨んだのは、夏太郎の父親だ。
「まぁまぁ。癌、治っていると良いですね。夏太郎は今晩はここにいてお父さんに付いてあげてさ。明日病院に一緒に行きなよ。僕はペン助とペン太を連れて、帰るから。」
こうして、僕とペンギン達は帰路に就いた。
「治し甲斐のない相手だった。お礼の一言もないとは。こういうのは、二度と御免だね。」
「むしろ、念で殺せば良かったな。」
気持ちは分かるが、親切に見返りは要らないと思うのだ、僕は。
とは言え、このままでは可哀想なので。
「僕は感謝してるよ!ありがとう!帰ったら餌、たっぷりあげるね!」
これには目の色を変えるペン助とペン太。
「流石は雪太!そう来なくっちゃな。」
「本当に治し甲斐のある相手だったね!次もよろしく!」
すっかり豹変しているのだった。

帰宅。
早速、ペン助とペン太に餌を遣る。
「早くしろよ、雪太ー!のんびりしてると、尻に火を点けるぞ!」
「遅くなったら、呪い殺すから!許さないから!ほら早く!」
「はいはい、ほら。」
何時もの五割増しで与えてみるのだが。
みるみる内に減って行く。
あっという間に完食。
で。
「足りないぞー!これで終わりだったら祟りが起きるぞ!」
「早くお代わりー!急げー!殺すぞー!」
追い立てられて、慌てて支度する。
これには参った。
どうやら、念で力を使い過ぎたので餌が沢山要るらしい。
流石は末期癌、伊達じゃない。
「ほらほら。」
「おぉ、流石だぞ!」
「わー!雪太様ー!」
結局、いつもの三倍もの餌を食べて、ようやく落ち着いたペンギン達なのであった。
もちろん、フンも三倍。
「これ、誰が掃除するんだょ、、、、、、。」
泣きたいょ、もう。
「今日は寝る!明日!」

翌日。
中庭をセコセコと掃除する僕。
その横で悠然と泳ぐ、ペン助とペン太。
思わず睨みたくもなるが、ここは我慢だ。
それにしても、寒い。
季節は、そろそろ冬。
風邪を引きそうだ。
うぅ、辛い。
と、そこへ。
「うぃーす。」
夏太郎が帰って来た。
「お父さん、具合はどう?」
「取り敢えずレントゲンからは癌は消えていたみたい。これから精密検査。ま、憎まれ口を叩く余裕があるみたいだし、大丈夫だろう。医者は腰を抜かしていたがな。有難うな、みんな。」
「そういえば床は大丈夫なのか?」
「張り替えるらしいな。母さんは業者に清掃を頼んで済ませたかったらしいけど。あの頑固親父はどうにもならんな。大黒柱には違いないから、仕方ない。」
そこへ、ペン助とペン太が割って入る。
「燃やしちゃえば良いょ!消毒、消毒!灰になればみんな綺麗!」
「雪太、いい加減火炎放射器買って来いよな!」
「要らないからー!」
一応、突っ込んでおく。
「おい雪太。腹減らない?おやつにしようぜ。」
「汚れ過ぎて掃除が終わんないのー!手伝ぇー!」
「良いぞ。その代わり、餌遣りは交代制な。」
「やっぱり良いです。冷蔵庫の中のシュークリーム、勝手に食べてて。」
「何だ、つまらん。」

「やっと終わったー!」
中庭の掃除を無事に終えて、のんびりとした午後のひとときを満喫。
する、筈であった。
が。
ここでペン助が一言。
「予定だと、今夜にも夏太郎のお母さん、亡くなるんだよね。心筋梗塞で。」
これは刺さった。
鋭く、胸に。
「夏太郎ー!たいへーん!」
大慌てで事態を知らせに行く僕。
これは、とんでもない。
「何!?マジか!母さんに電話しなきゃ。」
見ると夏太郎、手が震えている。
珍しい事もあるものだ。
まぁ、それだけ重大事なのだ。
言うまでもないが。

結局麗子さんは、胸が苦しい事を訴えて検査。
本当は平気だったらしいけれど、嘘も方便である。
で、そのまま入院となった。
後で聞いた話によると危なかったらしいのだが、一命を取り留めた。
発作前に治療が出来て、まずは良かった。
夏太郎まで僕と同じ境遇になるのは、悲し過ぎるから。
でも何故、ペン助とペン太は、念で治療をしてくれなかったのだろう。
そう思って頭を捻っているとーー。
「僕達を殺す気か!そんなに度々重病は直せないのー!」
ペン助に突っ込まれた。
まぁ、そうだよな。
ふと、中庭から空を見上げると。
今日も、突き抜けるような青さだった。

これからも、僕達のこのほっこりとした生活は続いて行く。
ペン助とペン太の能力は、これからもきっと僕達を幸せにしてくれる事だろう。
「ペン助、ペン太!有難う!これからもよろしくね!」
「おぅ!任せとけ、このトンチンカン!餌はたっぷりな。」
「餌をケチると祟られるよ、このアンポンタン!たっぷりで、よろしくね!」
口が悪いのが、玉に瑕。
とは言え、この幸せはいつまでも続いて欲しいから。
僕はペン助とペン太をもっと可愛がろうと、心の底から誓うのであった。

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ペン助・ペン太のほっこり劇場 [其の一]

夏。
北国の水族館。
皆、ペンギンの到着を待っていた。
だが、待てど暮らせどやっては来ない。
運搬していた車が、速度超過でスリップして事故を起こしたのだ。
衝撃で後部の扉が開く。
すると、中のペンギン二羽が我先にと脱走していった。
一目散に消えて行くペンギン。
そのスピードは意外と早く、事故で脚を負傷した運転手には、捕まえられなかった。
ペンギンの種類は、マゼランペンギン。
まだ水族館までにはだいぶ距離がある。
これは諦めざるを得ないかも知れないーー。
運転手はそう思っていた。

で、ペンギンである。
このペンギン、少し特殊な能力を持っている。
現地の言葉を話せるのだ。
ここは日本であるから、日本語を話すのである。
かといって、いつでも話す訳ではない。
必要な場所でだけ、話すのである。
水族館では、必要のない能力だ。
だから今まで、猫を被っていたのである。
しかも、念を使える。
ある程度の事までは、思い通りに出来るのである。
今、まだ三歳。
まだまだ寿命は長い。
さて。
車には普通は柵でもありそうなものだが、そこは作り話。
ないのだ。
その事もあって逃げられた訳である。
が、実はそれらは全てペンギンによって誘導されていたのだ。
まぁ要するに、全てはペンギンが仕組んだ事なのだ。
このように作り話とは、誠に以って都合の良いものなのである。
話を戻して。
スピードこそ速いが、所詮はヨチヨチ歩きのペンギン。
本来ならばドミノ倒しのように倒れてもおかしくはない所だが、そこもやはり作り話。
倒れないのである。

二羽のペンギンが一目散に向かったのは、ある青年が独りで住む家。
庭付きの一戸建てだ。
昨年両親が事故で亡くなったので、一人っ子だった彼は独りでここに住んでいるのだ。
彼は今、十九歳。
両親の遺産を取り崩して、大学に通う身だ。
名前は雪太。
そんな雪太の元に、ペンギンが近付く。
雪太はタイミング良く、玄関前で掃き掃除をしていたのだ。
「やぁアンポンタン。久し振りだね!馬鹿ぶりは相変わらずかな?」
「よぉトンチンカン。元気でやってるか?阿保面下げて。」
振り返るとそこには、二羽のちょっぴり懐かしい顔。
「ペン助!ペン太!」
「今日からここで厄介になるから。庭にプール、よろしく。」
この一戸建てには、中庭があった。
そこで雪太は、中庭に大きなプールを造ってやる事にした。
中庭の方が目立たなくて良い、そう考えたのである。
結果的にはそれは、無駄骨だった訳であるが。
何しろ散歩をせがむので、好奇の目線で見られるのだ。
それでも、ペン助とペン太が落ち着いて過ごせる環境作りには、一役買ったのだった。
とまぁ、プールは作る事になったのだが、工事が入るまでには時間がある。
その間は、大きなビニールプール二つでしのぐ事になった。

「しっかし暑いな。これは効く。もう駄目かもー。」
「早くプールー!」
「分かったから、ちょっと待ってて。ところでお前ら、トイレはどうしてんの?」
嫌な予感のした雪太は、ペン助とペン太に尋ねてみる。
するとーー。
「我等の行く所、皆トイレ也。」
「そう也。」
予想通りの邪悪な答え。
「ちょっと待て!冗談じゃない!頼むから中庭以外ではしてくれるな。家ん中でしたら、追い出す。」
「仕方ないな。中庭の掃除、しっかりしろよ、トンチンカン。」
「一日六回、綺麗にするんだょ!このアンポンタン!」
どさくさに紛れて、無理難題を押し付けようとするペン助。
「大学だってあるんだ。一日に六回も掃除出来るか!阿保!二回が限度だ!それと、なぜうちに来たんだ。水族館じゃ駄目なのか?」
「ほら、お世話になったじゃない?恩返ししようと思って。僕達可愛いから、居るだけで恩返しになるでしょ。」
何を言っているんだか、といった表情で溜め息をつく雪太。
それを見たペン太が一言。
「俺達があんまり可愛いものだから、溜め息なんかついてやがるぜ。照れるなぁ。」
これを聞いて、イライラせずにはいられない雪太なのであった。
「世話をする身にもなってみれっつーの。」
雪太、ボソリと一言。
だが、一方で内心では喜びに満ち溢れている自分も居た。

そう。
実は先程のペン太の一言はまんざらでもない。
ペン助とペン太は元々、雪太の家から程近い、古ぼけた水族館で飼育されていた。
個人経営の水族館で、客足が遠のいていた為に、館長は常々閉館を考えていた。
それを思いとどまらせたのが、雪太の存在だったのだ。
雪太はこの水族館に毎日のようにやって来ては、ペン助とペン太を眺めていた。
雪太は、館長とは良く話をした。
館長は、涙ながらに有難い、と言ってくれていた。
しかし、そんな日々にも遂に終止符が打たれる。
経営が行き詰まったのだ。
土地・建物を売る他に道はなかった。
最後の日、雪太だけがその水族館に訪れた。
いつまでもいつまでも、ペン助とペン太を眺めていた。
涙が、止まらなかった。
ペン助とペン太には特殊な能力があって、雪太がお金を持っている事を知っていた。
だからこそ、雪太の家の近くで車から脱走したのだ。
雪太になら飼って貰える、そう信じていた。
ペン助とペン太は、口は悪いがいい奴だ。
それは前から雪太が知っていた事。
誰も居ないブースの前で、雪太は良くペン助やペン太と話していたのだ。
それを館長は知っていた。
というよりも、館長もまた、ペン助やペン太とちょくちょく話をしていたのだから、知っていて当然だ。
雪太の家にお金があるとペン太から聞いていた、館長。
館長は、北国の水族館まで移動する途中で、脱走する事を提案する。
その方がペン助もペン太も、幸せになれると思ったのだ。
もちろん、雪太もだ。
毎日欠かさずに来てくれた雪太への恩返し。
ペン助とペン太は、すぐにその話に乗った。
問題は既に先方から渡されていたペンギン代であるが、これも決着が着いた。
もちろん、返すのだ。耳揃えて全額。
元々、運搬に関しては館長が責任を持っていたのだ。
まぁ水族館の建物はともかく、土地は高く売れたので、問題はなかった。
館長はお金を返す代わりに、ペン助とペン太の事は不問に付すように要求。
これが肝である。
先方がこれを飲んだ為に、この話は終わったのだった。
で、雪太は何だかんだ言っても、飼いたいのである。
かくして正式な雪太の家族となったペン助とペン太。
これから巻き起こる、ちょっと不思議で心温まる出来事に、ご期待あれ!

とまぁ、ぶち上げてはみたものの。
何にもないのである。実際。
でも、書かないというのも寂しい話なので、以下につらつらと書いてみる事にする。

雪太には、大学での友達は一人だけ居た。
幼馴染の夏太郎である。
実は二人ともゲイで、且つ相思相愛なのだが、どちらもその事には気付いて居ないという。
ある日。
大学からの帰り道で。
「なぁ雪太。最近面白い話とか、あるか?」
「家の中庭でマゼランペンギンを飼い始めたよ。憎たらしいけど、可愛いよ。」
「何だそりゃ……。ってペンギンかょ!?」
夏太郎は、目を丸くさせる。
無理もない。
だが、思い当たる節はあった。
「なぁ、それってもしかして、あのマゼランペンギンか!?」
「うん。」
「確か、喋ってたよな。あいつら。」
「うん。でも、世話は大変だよ。フンは撒き散らすし、プールも要るし。」
「何だ、じゃあ駄目か、、、、、、。」
実は夏太郎も飼ってみたかったのである。
が、無理だと分かってしょんぼり。
夏太郎は実家暮らしであるが、父親が潔癖症なのだ。
それに、プールなど設置する場所もない。
「しっかし、喋れる癖にフンは撒き散らすとか、あいつらも極悪だよな。」
「ね、酷いでしょ。」
「な、雪太!これからお前ん家寄っていいか?ペンギン見せろよ。」
「ま、別に良いけどね。口は悪いよ。覚悟してね。」
「そうなのな。でも、可愛いから許そう。」

で。
二人揃って雪太の家に到着。
「ここに来る度にいっつも思うんだけどさ。こんな屋敷に一人暮らしとか、寂しくねぇ?」
「好きでしてる訳じゃないしねぇ。ま、今はペン助とペン太も居るから、平気。それより、一日中家の何処かの掃除をしてる感じだからさ。そっちの方が大変。」
「そっか。大学もあるし、大変だな。」
玄関扉が開かれると、ホール越しに中庭が見える。
「ペンギン、名前は何だっけ?」
「ペン助とペン太。」
すでに中庭には大きなプールがあり、ペン助とペン太は優雅に泳ぎ回っていた。
小屋もある。
これも、ペン助とペン太のリクエストだ。
「おぉ、泳いでる泳いでる!」
夏太郎が近付く。
すると。
「やぁ、相思相愛のブスカップル諸君!よくぞおいでになられた。寛いでゆかれよ。」
「相思相愛の豚の丸焼きが二本。別に要らんな。」
早速、洗礼を受ける雪太と夏太郎。
夏太郎、呆然。
「ま、まぁまぁ。入って。お茶出すから。」
白々しくもその場を取り繕おうとする雪太。
だが、聞き捨てならないのは夏太郎だ。
「俺、お前の事が好きだ。笑いたきゃ笑えばいいし、軽蔑したきゃしてくれてもいい。ただ、本気だぞ。」
まさかの、本気での告白。
次の瞬間、雪太は夏太郎に抱き付いた。
「僕もおんなじ気持ちだよ。おんなじだよ。」
かくして、相思相愛ながらもなかなか結び付かなかった雪太と夏太郎が、ここで結び付いた。
もちろん、ペン助とペン太の力のお陰だ。
二人の心の中を、念で読み取ったのだ。
ここで夏太郎が雪太に提案。
炊事・洗濯・掃除は自分がやるから、共同生活をしてみないか、という事であった。
バイトをして生活費を入れるという。
別にお金には困っていない雪太。
何もそこまでさせる道理もない。
という訳で、バイトは良いから、家の掃除を手伝ってくれとお願いをしてみた。
答えはOK。
まるで新婚生活のような、二人の生活が始まるーー。
まぁ、ペン助とペン太に振り回されながら、ではあるのだが。

先も述べた通り、夏太郎は実家暮らし。
この近所に家がある。
と言っても、普通の家に毛が生えた位のものではあるが。
それ位が、この近所では普通であった。
雪太の家が異様に大きいだけなのである。
さて。
二人は共同生活をしたいというお願いをしに、夏太郎の家に向かった。
家に着くと、鍵を開け、中に入る夏太郎。
雪太もそれに続く。
すると。
中から夏太郎の母親・麗子が現れた。
「あら、いらっしゃい。雪太ちゃんね。久しぶり。」
「こ、こんにちは、麗子おばさん!」
この後の展開を想像して緊張する雪太。
吃るのだった。
「あら、雪太ちゃん。どうしたの、緊張して?」
訝しむ麗子。
と、ここで!
夏太郎、決死の告白!
「母さん、俺、ゲイなんだ!雪太の事がずっと、ずっと好きだった。今日、無事に告白を済ませたから。一緒に住むから、雪太の家で。引っ越すから。な、いいだろ?」
麗子の反応は、二人にとっては意外なものだった。
「あら、良いじゃない!夏太郎、やっと告白したのね。母さん、ずっと前からあなた達の想いに気付いていたのよ。気が気じゃなかったんだから。さ、上がって!今夜はお夕食食べて行きなさいな、雪太ちゃん。お祝いよ!」
二人の想いは、筒抜けだったのだ。
まぁ世の中、そんなものである。
「やったね!」
「良かった!」
玄関先ではしゃぐ二人。
「早く上がりなさいね。ケーキとコーヒーがあるのよ。」
「はーい!」
返事は、二人の声が揃った。
ユニゾンである。

リビングに向かう。
ソファに腰掛ける二人。
出て来たのは、クランベリーと木苺のケーキ、それにウィンナーコーヒー。
ケーキ、ワンカットが大きいのだが、モリモリ食べる二人。
そこは食いしん坊のデブだけに、そうなるのである。
「良い食べっぷりねー!流石ね。」
麗子も、感心している。
「でね。雪太ちゃんの銀行の口座番号を教えて欲しいの。夏太郎の食費と生活費を毎月入れるから。二人ともまだ学生なんだから、遊びも良いけど勉強も頑張るのよ!」
これに慌てたのが、雪太。
「あ、お金ならあるんで、大丈夫です!勉強頑張ります!」
だが、世の中そうは行かないもの。
「あら、駄目よ。少し位は受け取ってくれないと。お世話になりっ放しという訳にも行かないもの。ね!」
押し切られて、お金を受け取る事になった雪太。
「良かったわ!これで安心。今夜は焼肉よ!思う存分、食べる事よ。ね、二人共。」
「はい!」
「あーい。」
ここはユニゾンならず。
残念。

夕食までには間があるので、夏太郎の部屋で寛ぐ事になった二人。
テレビゲームに興じる。
対戦ゲームだ。
何度やっても負ける雪太。
「もういい!」
拗ねるのだ。
たまには。
「まぁまぁ、もっかいやろうぜ。」
と、そこへ。
『おぃトンチンカン!飯はまだか!』
『この薄情者!僕達を飢え死にさせる気だな!覚えてろ!』
ペン助とペン太の声が、雪太にだけ聞こえた。
「悪いね、夏太郎。ペン助とペン太に餌やって来るよ。すぐに戻るからさ、待ってて。」
「了解!」
という訳で、一旦帰宅する雪太。
帰ると。
「おぉ、死神が戻って来たぞ。俺たちを飢え死にさせる悪魔だ!」
「おぃ雪太、早く餌くれないとお前を食べるぞ!不味そうだけど、仕方ない。」
ペン助もペン太も、大騒ぎだ。
「はいはい、今持ってくるよ。待ってて。」
「嫌だ!待たない!」
「五秒で持って来い、トンチンカン!」
言いたい放題である。
仕方ないので、今日は餌を多めにやる事に。
「おぉ、ペン助、見ろ!今日は餌が多いぞ!普段はケチな癖に、出血大サービスだな!」
「流石は神様仏様、雪太様!」
一転して、拍手喝采。
そして、無心で餌を喰らうペン助とペン太。
これがないと念も使えないので、必死なのだ。
あっという間に食べ尽くす、ペン助とペン太。
ちなみに、ペン助とペン太は、いわゆるグルメではない。
普通のペンギンが食べるものなら、何でも食べる。
これは、世話をする雪太にとっては、有り難い事だった。
食べ終えると、途端に素っ気なくなるペン助とペン太。
「もう戻れ。夏太郎が待ってる。」
「とりあえず、お前に用はない。行って良し!」
「あいょ。」
これも、ペンギン達なりの気の遣い方なのだ。
それが分かっているから、腹も立たない雪太。
もうそこそこ長い付き合いなだけに、分かっているのだ。

で。
夏太郎の家に戻って。
夕食である。
焼肉。
豪華である。
ちなみに、麗子は元女優。
容姿端麗なのである。
が。
良く食べる。
太りにくい体質なのだ。
これは、雪太も知っている事。
ちなみに、麗子の夫は出張で居ない。
「さ、頂きましょう!」
ご機嫌な麗子の掛け声で、宴は始まる。
この日、用意された肉は一キロ半。
一人五百グラムである。
モリモリ食べる三人。
一人、痩せている麗子も負けてはいない。
あっという間に完食。
デザートは杏仁豆腐で、さっぱりと。
「ご馳走様でしたー!」
見事なユニゾン。
挨拶も皆で揃ってしっかり、である。

その後。
夏太郎の最低限の荷物を手分けして持って、帰る二人。
「それじゃ、二人仲良くね!」
「ありがとうございました!さようならー!」
「ほんじゃ、また。」
帰り道。
「ホントは、手でも繋ぎたい所だけど。」
「両手、塞がってるからな。」
不意に、キス。
夏太郎から、雪太へ。
二人にとってのファースト・キスは、フレンチ・キスだった。

帰宅。
とりあえず、その場に荷物を置く。
「おぉ、ブスカップルのお帰りだぞ!」
「ただでさえ暑い夜なのに、暑苦しいなぁ!ところで、今晩辺り初夜かな。」
「そのようだな。頑張れよ!」
紅くなる雪太。
茹でダコのようになった雪太を、夏太郎が引っ張って進む。
これにて今夜は、おやすみなさい。

翌朝。
今日は週末なので、お休み。
でも、のんびりしている時間はない。
昨日サボった分まで、掃除をしなければならないのだ。
夏太郎が中庭の掃除をしている間に、雪太は朝食の支度。
メニューは豚汁に鮭の塩焼き、肉じゃがに天ぷら。
朝からしっかり、である。
一方。
「おぃブス太郎!掃除、しっかりしないと丸焼きだぞ!雪太〜、火炎放射器〜!」
「俺達の朝食はまだか、ブス太郎!雪太、火炎放射器早く持ってこーい!」
中庭は朝から、騒がしい。

この日から、二人と二羽の共同生活が始まった。
これからは雪太の家は毎日、これまでにも増して賑やかになるだろう。
空は抜けるように青い。
入道雲が、雪太達を見下ろす。
夏の日差しの下で、ペン助とペン太はバカンス気分だ。
「雪太、手榴弾持ってこーい!」
「そんなのないからー!」
雪太と夏太郎、それにペン助とペン太の幸福な日常は、まだ始まったばかりだ。

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三毛猫と白猫 [其ノ伍]

凍えていた。
手が、震えていた。
君の手が、恋しかった。
だから、そっと握った。
温かな感触。
貪るように味わう。
次の瞬間。
君の瞳から、涙が一雫、落ちた。
僕達はもう、戻れない。
振り返っても、仕方ない。
ただ、前に進まなければ。
それだけが、己に残された出来得る事の全てだった。
まるで、男女の駆け落ちのような。
まさに、苦闘の日々の始まりであったーー。

ーー東京・新宿。
奥秩父の実家から、着の身着のままで出て来た。
所持金は僅か。
財布はどうにか持ち出したが、タンス預金を取り出す余裕もなかった。
背後より飛んで来る文庫本から身を守りながら、大慌てで家を飛び出した。
目下、絶体絶命。
ーー俺の心情を察したのだろう。
ここで恋人・信太が口を開いた。
「僕の財布もあるし、それぞれの銀行の預金もあるから。多分、大丈夫。」
そうだ。
良かった。
これで少しは食い繫げる。
「ありがとう。」
他に言葉が浮かばなかった。
東口の前で、どちらからともなくハグをする。
奇異の目線も、気にならない。
嗚咽を漏らす。
涙が、止まらないのだ。

そのまま、暫しの時が流れ。
「行こう。」
信太は俺の胸の中から離れると、手を取って歩き出した。

俺と信太は、幼馴染だ。
同い年で、幼稚園の頃から、一緒。
小学生の頃には、恋仲になっていた。
告白したのは、俺。
「俺、お前の事が好きだ。傍に居てくれ。離さないから。」
それだけだった。
信太は、ただ頷くのみ。
単純な、けれども俺達二人にとっては十分な遣り取りだった。
それからの俺達は、以前にも増して助け合うようになった。
特に勉強は、ノートの貸し借りをするなどして共に支え合った。
実の所は、勉強を口実にして、二人で過ごす時間を作っていたのだが。
それでも、成績が下がると会わせて貰えなくなるので、勉強は頑張った。
二人共、中学に上がる頃には、常に上位の成績をキープするようになっていた。
高校は、地元から離れた進学校に二人で通おうーー。
そう約束し合っていた。
だが。
二人の逢瀬は、互いの両親に筒抜けとなっていた。
中学の卒業式の日ーー。
俺は父から、こう言われた。
「お前たちの事は、前から知っていた。勉強に精を出していたから、一時的に見逃していた。だが、今日でそれも終わり。卒業だ。これからは男とではなく、女との道を歩くのだ。いいな。」
悔しかった。
ただ、悔しかった。
涙が、止まらなかった。
それから三年間、信太とは逢えなかった。
両親は担任に口添えしており、同じ高校なのに逢う事は叶わなかった。
長かった。
遥かな、道のりだった。
毎日、泣いていた。
歯を食い縛って、堪えた。
暗い日々が過ぎ、遂に高校の卒業式。
式を終えると、信太が、俺に近付く。
「さ、行こう。駆け落ちみたいだけど。」
その時信太は、笑っていたーー。
それからは、あっという間だった。
先に信太の家に行って、荷物を取ろうとしたが、兄弟に邪魔されて失敗。
次に俺の家に行くと、今度は祖父母が立ちはだかった。
俺の部屋で。
財布を取り、棚のタンス預金に手を伸ばそうとすると。
祖父母は手近にあった文庫本を次から次へと投げ付けてきた。
もうここへは戻れないーーそう。
退路を断たれた、まさにその瞬間だった。

それから、何となくの流れで、新宿に流れ着いた。
惰性で。
ただ、名前を知っていたから。
それだけの理由だった。

「これから、どうしよう。」
「そうだね。今夜はネカフェのペアシートで過ごそうか。」
「賛成。」
目的地がある訳ではない。
ただ、ネットカフェを探して歩く、それだけの事。
でも、それだけの、たったそれだけの事が、今の俺には、この上なく幸せな事にも思えた。
言うなれば三年ぶりの、二人での共同作業である。
嬉しくない訳がないのだ。
完全個室のネットカフェのシートで。
手を繋いで眠る。
それだけで、現実からの逃避が出来た。
一時的な事だが、それでも、この時には十分だった。
と、ポケットの中でバイブが響く。
慌てて出ると、父からの電話だった。
急いでスピーカーフォンにする。
「圭よ、最後通告だ。今すぐに戻れ。許してやる。見合い話もある。極上の相手だ。戻らなければ、義絶する。」
電話口には、交代で信太の母が出た。
母は信太に、切々と問い掛ける。
「信太、戻って。ホモの病気、一緒に治そ。お母さん諦めない。あなたは絶対に結婚する。だから大丈夫。戻って来て。私には義絶なんて出来ない。だって信太は私の物だから。」
実の所は、気持ちは分からないでもなかった。
でも、「私の物」という表現には流石に俺は激昂した。
「信太はあんたの所有物じゃない!信太は自分の意志でここまで来た。誘拐した訳ではないんだ。渡さない。絶対に。」
ここで信太が沸騰した。
「今日までお母さんでいてくれたあなたには、心から感謝しています。もう構わないでください。僕の前にあなたが現れたら、僕自殺します。許してください。耐えられないんです。」
電話口の向こう側からは、啜り泣く声が延々と聞こえた。
こうして、俺達にとっての不愉快な遣り取りは終わった。
たとえ一時的な事であってもこれは嬉しい、そう思った。

翌朝。
ネットカフェを後にする。
アテはなかったが、仕事は探さなくてはならない。
しかしそれにしても、住所は必要だ。
だからといって、物件を探すのに仕事が要らない訳ではない。
堂々巡りだった。
寮付きの仕事でも見つかれば良いのだが。
そんな事を考えながら二人で街を歩く。
すると、歌舞伎町に差し掛かったあたりで、一匹の猫が足元に寄って来た。
「おはよう。私はミミ。三毛の野良猫。よろしくね!」
噂には聞いていた、喋る野良猫、登場。
信太は怯えているようだったので、大丈夫である事を俺から説明する。
「あら、説明して頂けて助かるわ。二人の小さな願い事、三つだけ叶えてあげる。願い事は、二人同じでも良いのよ。」
ここで信太が口を開いた。
「二人で末永く、誰にも邪魔されずに仲良く一緒に居られる事。仕事が長く続きますように、という事。これから先ずっと、住まいと食べる物に困らない事。二人の願い事はそれだけ!」
信太は、真剣だった。
俺は、ここからが苦闘の始まりだと思いつつも、藁をも掴む思いだった。
「あなた達の手助けはするし、願いが成就する為のきっかけは作ってあげる。後はあなた達次第よ!頑張って!」
それだけ言うと、ミミは去っていった。
後ろ姿が眩しかったのは、陽射しのせいだけではなかった。

新宿西口から西新宿へと歩く。
中央公園で一休み。
スマートフォンを取り出して、求人を漁る。
もちろん、寮付きが良い。
自動車の期間工の求人が多いが、正社員を目指せるらしい。
ミミの力を借りれば、出来るかも。
ここで、去った筈のミミの声が聞こえた。
『大変な仕事よ。でもあなた達なら正社員になれるわ。作業のコツは私が教えるから、大丈夫。二人共、体力があるからピッタリよ!』
これにはお礼を言わずにはいられない。
「ミミ、有難う!」
声が揃った。
前向きになる、自分。

幸い、住所はまだ二人共に実家にあった。
住所不定でなくて、助かった。
とはいえ、所持金の事もある。
急がねば。
二人して早速面接の予定を立てた。
ミミも言っていたが、俺達は高校時代、運動系の部活に所属していたから。
体力には自信があるのだ。
一応、高卒でもある。
期間工を終えた後の万一の仕事探しの際にも。
中卒よりは仕事を見つけるのも楽だろう。
三年間の辛抱が、いつか役に立つかもしれないーー。
そう思えて、俺は嬉しかった。

それから。
俺達は面接の日程を組んだ。
残り少ない預金ではあるのだが。
それでも、背に腹は変えられないので、スーツも買った。
履歴書も用意して。
準備万端だ。

予想通り。
苦闘はここから、始まった。
面接は、受かったのだ。
勤務先の工場は郊外にあるので、俺たちは東京を離れる事になった。
同じ工場での勤務。
嬉しい筈だった。
だが。
いざやってみると、仕事がキツイのだ。
これには面食らった。
怒られる事は、ほぼなかった。
ミミが俺達二人にやり方を逐一教えてくれていたからだ。
手が止まる度に、ミミの心の声が聞こえる。
頼もしい。
しかし、慣れない。
部活で使う筋肉とは、使う筋肉の場所が違うらしい。
それでも。
いつか二人で暮らそうと、決めていたから。
だから、諦めなかった。

歯を食い縛る日々。
それでも、楽しみはあった。
良く互いの部屋に遊びに行った。
部屋では、テレビゲーム三昧。
アニメも良く観た。

夏には、毎週末のように日帰りで海に行った。
水にプカプカ浮いて、何となく波に乗る。
楽しい思い出。

秋には、紅葉狩り。
紅色の葉っぱの絨毯が、綺麗だった。
あてもなくそぞろ歩くだけでも、嬉しかった。
この頃からようやく、ミミのアドバイスなしでもノーミスで仕事が出来るようになった。
上司からは認められていた。
これは有難い。
戻る場所がないだけに、後がないのだ。
仕事中は常に、緊張感が支配していた。
ストレスは溜まってはいたが、二人の未来が掛かっているのだ。
ここで逃げ出す訳にはいかない。
ここが踏ん張りどころーーそれは分かっていた。
分かっていたのだ。

冬。
俺が好きなので、週末、信太を良くスキーへと連れて行った。
幼馴染なのに、これまで一緒にスキーをした事がなかった。
信太は正直、スキーは下手だった。
暫くはボーゲンだろう。
それにしても、信太がリフトに乗り降りする姿を見ていると、怖くなってくる。
いつか落ちるのではないかと、気が気でないのだ。
ゲレンデの雪はパウダースノーで、雪の結晶の形を綺麗に保っている。
まるで信太の瞳の輝きのようで、俺は思わず涙する。
ここまで、長かった。
『もう大丈夫よ。二人共良く頑張ったわ。あなた方は今度の夏の試験で、正社員に正式に登用されるわ。これからも頑張ってね!』
ミミの言葉で、思い返す。

そうだ。
君が、好きだーー。

ーー凍えていた。
手が、震えていた。
君の手が、恋しかった。
だから、そっと握った。
真っ白なゲレンデの上で。
グローブを外して。
温かな感触。
貪るように味わう。
次の瞬間。
君の顔から、笑顔が零れた。
僕達はもう、戻らない。
振り返っても、意味がない。
ただ、前に進まなければ。
それだけが、己に残された出来得る事の全てだった。
まるで、男女の駆け落ちのような。
しかし、ようやく掴んだ、幸せへの第一歩でもあったーー。

春。
お花見をした。
二人で、仲良く。
料理の得意な信太が、お弁当を作ってくれた。
美味しい。
頰が落ちそうだ。
見上げると、桜の花びらが舞っている。
苦労の末に掴んだ幸せ。
手放したくないーーそう思って、泣いた。

帰り道。
飲酒運転の車に、信太がぶつかった。
信太に非はない。
だが、俺は気が動転していた。
すると信太、ぶつかった直後だというのに、笑っていた。
「圭、大丈夫だからさ。落ち着いて。」
相変わらず、情けない俺。
それでも、こんな俺でも必要としてくれるーー。
そんな信太を手放す事は、決して出来ない。
まずは心配だったので、救急車へ通報。
加害者の車は、突然やって来た白猫が、ボンネットの上に乗って足止めしてくれていた。
病院で検査。
軽傷だった。
良かった。
本当に、良かった。

夏。
俺達二人は、本当に正社員になってしまった。
本来ならば驚くべき事だが、ミミがいたから、信じられた。
『二人共、助け合って頑張るのよ!また遊びに来るわ。それじゃ!』
ミミの声が聞こえた。

俺達は、こうして二人手を取って、共に歩んで行く。
やっと掴んだ喜び。
手放す訳にはいかない。
空は、どこまでも抜けるように青くて、見ていて不安になる。
まるでちっぽけな俺達を見下ろしているかのようで。
それでも、俺達には絆があるから、大丈夫。
そう信じられたから、俺は信太の手を離さない。
幸せのページが、また一枚めくられたかのような午後。
今日は休みだ。
この空の下で、これからの未来に思いを馳せながら、前へと進んで行く。
その覚悟を、決めた。
俺達にはきっと、明るい未来が待っているーー。
だから俺達は今、心から幸せだ、そう胸を張って言えるのだと思う。
二人でなら生きて行ける、そう心から思えた夏の日の午後の事だった。

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三毛猫と白猫 [其ノ伍・番外編]

「さ、行こう。駆け落ちみたいだけど。」
その時、君の目が輝いた。
僕が取り戻したのは、君のハートだった。
使ったのは、精一杯の笑顔。
失くした時間は、三年間。
もう一度、やり直せるか。
勝負だ!

[Part 1 : 語り・信太]

高校の卒業式。
卒業証書を受け取った僕は、隙を突いて圭の元へと駆け寄る。
このまま、駆け落ち同然で上京するつもりだった。
親や先生の目を潜り抜けて、一目散に二人の実家へーー。
それは、荷物を取りに行く為だった。
が、留守番の者の抵抗に遭い、持ち出せたのは二人の財布だけ。
圭の祖父母なんて、見境なしに文庫本を投げ付けてきた。
どうかしている。
でも、それでも良い、そう思った。
二人でなら何とかなる、そう信じていたからだ。
連れ戻されないためにも、駅まで必死に自転車を漕いだ。
何故だか、気分は高揚していた。
三年間、変わらず待っていてくれた事への、心からの感謝。
涙で視界が歪む。
でもそんな悠長な事も言っていられない。
車で連れ戻しに来るかも知れなかったからだ。
僕達は、途中小道や路地も使いながら、駅まで急いだ。
昨晩読んだ時刻表によると、もうすぐ上り列車が到着する。
どうにか、間に合った。
改札を抜けて電車に飛び乗る。
これで圭と、また一緒に居られる。
せっかく受かった大学はこれで棒に振るだろうが。
それで、良かった。
ポーカーフェイスを保とうとしたが、無駄だった。
とめどなく溢れ出る笑顔。
それを見た圭もまた、喜色満面だった。

電車を乗り継いで、東京へ。
次第に圭の表情が固くなってゆく。
気持ちは分かる。
何せ、失敗するわけには行かない。
後がないのだ。
東京に着く頃には、あれだけ話していた僕達は、無言になっていた。
そして、新宿駅東口前ーー。
僕達は、三年ぶりに抱き締め合った。
言葉は、要らなかった。
ただ無言で、嗚咽を漏らしていた。
やがて僕が泣き止んでも、圭は泣くのを止めない。
可愛いな、そんな事を思いながら、圭の手を引き、東口を後にするのだった。

そして、とりあえずの寝床を探しに、街をふらつく。
程なくして、一軒のネットカフェが視界に入った。
今夜は、ここで良いだろう。
とは言っても、まだ夕方前。
だが、やむを得ない。
時間は早いが、疲れていたのだ。
精神的にやられている。
肉体以上に。
会員証を作り、コースを選んで、ブースのカードキーを受け取る。
料金はちょっと高いが、仕方ない。
エレベーターで移動し、ブースの中に入る。
デブ二人にはちょっと狭いが、今の僕達には、この位の距離感が丁度良い。
横になると、自然と睡魔が襲う。
手を繋いで。
夢見心地で、意識が消えるーー。

ーーブー。ブー。
携帯の着信を示すバイブ音が響く。
圭の携帯だ。
圭は慌てて目を覚ますと、着信をしてスピーカーフォンに切り替える。
電話口の相手は、言いたい事を言っていた。
僕は母親の所有物だったらしい。
人の人生を何だと思っているのか。
腹立たしさだけが、最後まで残った。

[Part 2 : 語り・語り部]

場所は奥多摩。
三毛猫と白猫が多く棲む洞穴。
「ねぇミミ。あなたがお世話になった人のね。お友達とその恋人さんが今、ピンチらしいよ。」
「そうそう。圭さんと信太さん、だったはず。確か。」
「助けてあげたら。偽装結婚の危機らしいよ。」
白猫三匹が次々とミミに話し掛ける。
「そうね。圭さんのお友達には、私随分とお世話になったの。恩返ししなくちゃ。あの子達が行きそうな場所を教えて頂戴。すぐに向かうわ。」
ここでミミと同じく特殊な能力を持つ三毛の野良のモモが言う。
「いざとなったら私を呼んで!飛んで行くわ。」
「静養中なのに……。有難う、モモ!でも大丈夫。意地でも助けるわ、あの二人。遠くから見ているだけで、ジンとくるのよ。」
「気を付けてねー!ミミー!」
「モモ、ララ、留守をお願いね。みんなの面倒、大変だろうけどよろしくね!」

ミミは辺りを警戒しながら洞穴を出ると、一目散に駆け出した。
まずは大通りへと向かう。
「偽装結婚だなんて、良くないわ。何とかしなくちゃ。」
焦るミミ。
大通りに出ると、ミミは大型トラックやバスの運転手達に呼び掛けた。
ミミはこれまでに何百人もの大型トラックやバスの運転手達の願いを叶えてきた。
早速反応がある。
とある大型トラックの運転手が、ミミの願いを聞いてくれたのだ。
白猫によると、圭と信太は、新宿の歌舞伎町沿いの大通りを明日辺りに通るらしい。
大型トラックの運転手は、丁度東京方面に向かうらしく、ついでに新宿近辺まで運んでくれるという。
車内で。
「お久し振りね、康孝さん。奥さんと息子さんは、元気?」
「おぅ。お陰様でな。元気過ぎて困る位だ。」
康孝は声を上げて笑った。
康孝の息子は、今年で一歳。
本来ならば、生まれて来る筈のない子供だった。
康孝の妻は路上の小石に躓いて転倒、息子を流産する筈だった。
その危機を救ったのがミミだったのだ。
リストラに遭った康孝の次の仕事を決めたのも、ミミだった。
そのようにして築かれたミミと康孝の絆は、容易には壊れない。
ミミは何百人もの運転手達と、そうした固い絆を築いてきたのだ。
その数は、これからもどんどん増えて行く事だろう。
ミミはまだ若い。
時間はたっぷりあるのだ。

[Part 3 : 語り・語り部]

その昔。
日本列島に隕石が落下した。
その隕石には特殊な性質が備わっていて、黒秘岩と呼ばれるものだった。
隕石は六ヶ所に落ちた。
道東、宮城、奥多摩、奈良、徳島、鹿児島だ。
三毛猫と白猫は、その毛の色から黒秘岩の力の影響を受けやすかった。
喋る猫に三毛猫と白猫が多いのは、その為だ。
喋る猫は、未来も予知出来るし、テレパシーも使える。
また、黒秘岩は一部の三毛猫に、人の願い事を叶える力を与えた。
その力を持った三毛猫は、全国に常時三十匹程居て、その半分程が全国を転々としている。
残りの半分は、静養しながら、特殊な能力を持たない三毛猫や白猫達の面倒を見るのだ。
特殊な能力の持ち主として選ばれるのは、健康で若く心の綺麗なメスの三毛猫。
黒秘岩は別に生きている訳ではない。
しかし、選ばれる三毛猫は大体、そう相場が決まっている。
旅を終えた三毛猫は、次の旅に備えて休養をする。
ミミが今回故郷の奥多摩に居たのも、その為だ。
特殊な能力を持った三毛猫のサポート役となるのは、残りの三毛猫と、白猫達。
彼らの活躍も、三毛猫の旅には欠かせない。

旅から戻って待機する三毛猫と白猫は、大体が生まれた洞穴の中に居る。
もちろん、喋ろうがどうしようが、霞を食べて生きて行ける訳ではない。
なので、旅から帰った三毛猫の内、特殊な能力を持って居るものが、餌を恵んで貰い、皆に分ける。
願い事を叶えてあげた人間達に、お願いをするのだ。
それで足りない分は、森の恵みを拝借する。
そこでも、三毛猫の特殊な能力は存分に発揮される。
「モモちゃん、そこにトカゲが居るわ。お腹を空かせたララちゃんに分けてあげて!」
「承知したわ!」
「モモちゃん、そこに小鳥!」
「待ってて!」
特殊な能力で森の小動物を続々と捕獲するのだ。

黒秘岩の力の影響を受けるのは、基本的にはメス猫である。
従って、繁殖は外部の猫との間で行われる。
黒秘岩の力は遺伝しない。
ただ、傍で暮らしていれば自然と影響を受ける。

そして皆、人間と仲良しだ。
人間には悪い面も沢山あるが、良い面もある事を、三毛猫や白猫達は知っている。
今日も、圭と信太の恋路を、奥多摩の三毛猫と白猫達が揃って応援していた。
その力は、確かに二人には届いていた筈だ。

[Part 4 : 語り・信太]

上京二日目。
二人で歌舞伎町を歩いていたら、喋る猫のミミと出会った。
それから、事態が大きく動き出す。
何といっても大きかったのは、ミミの力で仕事が決まった事だ。
期間工だったが、所持金が残り少なかっただけに、有難い。
それからも、仕事では数え切れない程、助けられた。
何しろ、作業の手順やコツを、逐一教えてくれたのだ。
これは本当に有り難かった。

圭とは、以前にも増して仲良くなった。
三年間の空白を、埋めて余りある幸せーー。
圭への消し難い愛情と共に、それを感じてならないのだった。

想い出は、沢山出来た。
圭はスキーもスノボも上手い。
で、スキーの方が取っ付き易いだろうという事で、度々誘われるのだが。
これがちっとも上達しない。
いつまでもボーゲン。
恥ずかしい。
「また随分とへっぴり腰だな、ボンレスハム。」
「うるさいょ。」
だけど、風を切って滑っていると、寒いけれども心地良い。
リフトの乗り降りに慣れないのは、ご愛嬌。
「危ない!落ちるぞチャーシュー!」
「あーあー!」
実の所、圭にチャーシューだとかボンレスハムだとか言われるのは、とても嬉しい。
昔に戻れた気がするから。
だって圭はデブ専だし。

春になると、花見をした。
ちょっとお酒も混じって、良い感じ。
普段飲むのは発泡酒だけど、花見にはビールをおごる。
料理は僕の担当。
チャーシューとかボンレスハムとか言われているのは、伊達じゃない。
重箱に色とりどりのお惣菜を詰めるのは、楽しい時間。
圭の顔がお酒で紅く染まるのを見ていると、僕の胸はポッと温かくなる。
「ねぇ、圭。今夜、抱いてよ。」
「おぉボンレスハム!今するか、ここで。」
「酔ってるでしょ!馬鹿!」

夏には、良く海に行った。
二人とも泳ぎは得意なので、波に乗ったり、泳いだり。
時折休憩してかき氷を食べるのだけど、移動中、砂浜が熱くて敵わない。
照り付ける陽射しの下で、二人並んで。
寝そべっているだけで、嬉しかった。
こんがりチャーシュー二本の、出来上がり。

秋。
紅葉の季節。
ハイキングや紅葉狩りに出掛けた。
アウトドアウェアを着込んで、時には湿原にまで足を伸ばした。
「この板張りの通路、僕達ボンレスハムが歩いているのに良く壊れないね。」
「まぁ、丈夫に出来てるんだろうな。ジャンプしてみようか?」
「やめれ(笑)」

四季折々の、想い出。
一つ残らず、心に刻み付けたい。
確かに、そう思った。

やがて僕達は正社員になった。
仕事は忙しくなったが、遣り甲斐はある。
正に汗水垂らして、実直に働き通した。

仕事が忙しくても、欠かさなかった事がある。
それは二人の想い出作りだ。
次の冬には、遂にボーゲンを卒業した。
二十回目の奇跡。
感無量だ。
「凄いじゃんか!チャーシューの割には。」
「ねー。ホテルに戻ったら、パーティーしようょ!」
「食材は要らないな。自分たちの腹の肉を喰らえば良いんだし。」
「何言ってんの。馬鹿じゃないのー!」
大笑いだ。

春。
月日の経つのは早いもの。
限られた時間、大切に遣わなければ。
という訳で、休みを使って、生まれて初めてテーマパークに行った。
かねて、行ってみたいと思っていたのだ。
二人共。
しかし、何というか、完全にお上りさん。
人が多過ぎて辟易。
昨日まではあんなに楽しみにしていたのに。
正に全人口、みたいな。
渋谷より酷い混雑は、二人共初めてだったのだ。
落ち込むのも無理もない。
軽食を食べるのに三十分待ち。
アトラクションは二時間半待ち。
「おぃボンレスハム、これは幾ら何でも待ち過ぎだろう。」
見ると圭の頰はトラフグのようにぷっくりしていた。
前にも書いたが、チャーシューだとかボンレスハムだとか呼ばれるのは、結構好きだ。
中学時代に戻れた気がして、嬉しいのだ。
しかし、この行列。
どうにもならない。
分かっていながらもなだめる僕。
「辛抱だよ!来たからには元を取らないと!頑張ろう!」
辛うじて圭の瞳に笑顔が戻った。
で。
結局。
もう来ない、これが二人の出した結論だった。
でも、アトラクションは楽しかった。
目に焼き付けよう。
二度と来ないだけに、しっかりと。
まぁ二人揃って人混みは苦手だから、仕方ないのだ。
今日来たのも、一度位は、という程度の事だったので。

夏。
週末になると良く民宿に泊まりに行った。
一泊二日で。
海水浴にスイカ割り。
楽しいのだが、スイカ割り、上手く行った試しがない。
「下手だなぁ、ボンレスハム。」
「自分だってチャーシューの癖に!人の事言えないし。」
「でもこういうの、好きなんだろ、マニアックだな。」
「もしかして圭は、こういう身体は嫌いな訳?」
思わず、涙ぐんでしまった。
恥ずかしい。
と、不意に。
頰にフレンチキス。
耳元で囁く、愛の言葉。
その場で蕩けそうになった。
ずるいよなぁ。
でも、そんな圭が大好きだ。

秋。
この話のラスト。
圭の両親は相変わらず自分の息子を義絶していた。
だが、僕の母親は変わってくれた。
セミナーに行ったり、専門家にアドバイスを受けたり、文献を読み漁ったり。
そうした中で、僕の父親までもが、考えを変えてくれた。

僕の両親の勧めで、僕達二人は養子縁組をする事になった。
多分、最初で最後のチャンスだ。
大切に、大切にして行きたい。

そうそう。
寮を出て二人暮らしも始めた。
まだ真新しい2DKのアパートで。
今までにない程の、賑やかな日常。
「雨だ、チャーシュー!洗濯物を取り込め。俺は部屋の掃除で手が離せない。」
「あいあいさー。」
「次は夕食作り、頼むな。俺は風呂掃除をするから。」
「りょーかいっ!ボンレスハム!」
小さな頃から夢見て来た日常が、そこにはあった。
ただひたすらに、嬉しい日々だった。

僕達はこれから先も、手を取り合って生きて行く。
空を見上げると、どこまでも高い秋空の下で、ちっぽけな自分が不安になる。
でも隣には、圭が居てくれるからーー。
だから、怖くない、きっと。
少なくともそう思いたくて、圭にいきなり抱き付いた。
笑顔だった。
嬉しかった。
僕達は、幸せだった。
僕達の温かな日常は、まだ始まったばかりだ。

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